ハッチは雀の子供です。 力君がエサをあげている雀たちの中で、一番小さくて、そして、あたし達にとって特別な雀でした。
他の子供たちは大きくなって飛べるようになっても、まだまだ、口を開けて親に食べさせてもらっていたりして、親たちも甲斐甲斐しくお世話しています。 ところが、ハッチはいつも1人で、たどたどしく、1人でえさを突っついていました。 ハッチは生まれつきか?もしくは、完全に体が出来る前に何かの事故が合ったか? 足が片方、麻痺していて、体も羽も片方が少しねじれているようでした。だから、高く飛ぶ事も難しいし、地面に着地したとき、両足で体を支えるのが出来ないから、すばやく動く事なんてもちろん出来ませんでした。 力君とあたし達は、自然に生きている鳥たちに余計な事はすまい・・・と思いながらも、ハッチがいじらしくて、可愛くて・・・毎日、朝にハッチがやってくると、 ”あー、今日もハッチは元気でがんばってるな!” って、ホッとしたものです。 そのうち、心なしかハッチの動きが前より、鈍くなってきて、しかも、近所のネコが、地面にいる動きの、のろいハッチを狙うようになってきてしまって、このままの状態を見守るか? 家の中で体力がつくまで保護するか? すごく、迷いました・・・自然に生きるものを一度でも保護したら、もう外では生きられないかもしれないし。 でも、このまま、見過ごすのはできないし、ハッチは私達にとても良くなついて、手からでもエサをもらえるようになっていたから、保護するのは難しいことではありませんでした。 そして、鳥カゴを用意して向かえた日・・・・、車道に小さな動かないハッチがいました・・・・、力君があわてて手にとると、まだ、体が温かかった。 飛んでるときも、危なっかしくて、いっつも冷や冷やしてたけど、車にひかれてしまうとは・・・、こうなる前に保護しておきたかった気持ちと、これこそが自然の中に生きるものの厳しさなんだ、っていう気持ちが、どうにも無力感を感じて、悲しくて。 ハッチは家のチー子の隣に眠っています、ただただ、また生まれてきたら、今度は幸せに、元気に暮らして欲しい・・・って、思ってます。