本と映像の森 231 レイ・ブラッドベリ『華氏451度』ハヤカワ文庫、早川書房、1975年11月30日~2004年(平成16年)9月30日第28刷、288ページ、定価600円+消費税
原著は1953年、アメリかです。「華氏451度」は紙が燃え始める温度(セ氏233度)で主人公のモンターグの職業が「ファイアマン」でヘルメットに「451」と刻印されています。
職業はテレビが支配する社会で、禁止されている本を焼くことです。その本を焼く仕事で、妻あり、30才のモンターグガ隣に越してきた少女クラリスと出会うところから物語は始まります。
クラリスはモンターグに聞く。「ずっと昔、火事をあつかうお役人の仕事は、火をつけることではなくて、火を消すことだったんですってね」
そしてクラリスはこう言います。「たしかにあたし、あなたの知らないことを知っているわね。夜明けになると、そこら一面、草の葉に露がたまるのを知っていて?」
本を焼くという行為に対置されるのは「記憶」です。疑問を持ち始める前半から始まって、ついに禁書を手にしてしまう主人公が前半です。
そしてそれが発見されて逃げることになる後半はこの社会が一瞬の原子戦争に突入するのと平行して、モンターグが逃げ回り、ついに…。
「書物の熱愛者」が描いた人間讃歌です。
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ここまで来て、似たような「記憶」の物語が同じアメリカの、同じSF作家であるアシモフさんの「暗黒星雲のかなたに」にあるのを思い出しました。「暗黒星雲のかなたに」は原著「The Stars,Like Dust」で1951年ですからアイディアとして「華氏451度」より早いですね。