本と映像の森 263 梅田阿比(あび)さん著『クジラの子らは砂上に歌う 1』<ボニータ・コミックス>、秋田書店、2013年、191ページ、定価本体429円+消費税5%
世界を覆い尽くす「砂の海」を漂白する巨大な泥舟「泥のクジラ」で暮らすチャクロの日記で辿る異世界の漂流記です。
「泥のクジラ」の人口は513人、「念動能(サイミア)」を持つ「印(シルシ)」とよばれる短命の多数者は459人、サイミアを持たない「無印」とよばれる長命者は54人。
チャクロはサイミアのコントロールの才能のなさそうな「印」で、亡くなった祖父から「ハイパーグラフィア(過書の病)」と言われるほどの記録マニアで、14才、男性、泥クジラの記録係です。
「泥クジラ」には「第1から第5までの塔、居住区、農園、貯水池、専門棟、ヒゲ広場、オオマサゴリクの林」などがあります。
チャクロの日記」によれば物語は「砂刑暦93年7月2日、ベニヒ(印)の葬儀、享年29,教育係、供花はシシイロギク、ヒゲ広場にて砂葬」との場面から始まります。
たぶんベニヒの砂葬の翌日、泥クジラから「島」が発見され、「偵察隊」が組織され、チャクロも偵察隊に加わって島へ上陸。
チャクロは、いや泥クジラの人々は生まれて初めて、泥クジラ以外のヒトに出会う。その島にひとりだけ生き残っていた少女は「リコス」という名前で「ここはファレナか」と聞く。
「砂刑暦93年7月8日 飛蝗現象を確認」と書いた翌日の昼間、砂海の中から突然、船が現われ、泥クジラの人々に銃で発砲し、襲い始めた。
事情を知るリコスは「戦うしかない 戦うしか」と独白する。
危機にどう対処するのか?チャクロは?リコスは?こっからがいいところなので、そこは実際に本をお読みください。
なお年末にこの第1巻が出たばっかりなので、次巻を紹介できるのは、来年のいつ頃でしょうか。
この「砂海世界」は宮崎駿さんの「腐海ートルメキアー土塁ー風の谷」世界に、どこか似ているように感じます。絵柄も少し似ていますし。
本は次女のアイさんからお借りしました。アイさん、いい本をありがとうございます。