本と映像の森 264 岡本茂樹さん著『反省させると犯罪者になります』<新潮新書>、新潮社、2013年、220ページ、定価本体720円+消費税5%
すごい逆説的なタイトルですけど、内容は臨床教育学の専門家である著者が、刑務所での累犯受刑者の更生支援にかかわった具体的な経験が述べられています。
まえがきから引用すると「悪いことをした人を反省させると犯罪者になります。」もう少し詳しく引用すると、著者は「「悪いことをする」→「『すみません』と言って反省する」→「終了」というパターン」を問題にしているのです。
「反省させる以前に、しないといけない「大切なこと」があるのです。この大切なことが欠けていると、犯罪者が生まれます」(p5)
刑務所で著者は「私は彼らに反省を求めません。反省を求めない方法で個人面接や授業を進めていくうちに、彼らの多くは反省していきます。反省させようとする方法が受刑者をさらに悪くさせ、反省させない方法が本島の反省をもたらすのです。」(p6)
以下、箇条的に内容紹介しますが、ぜひ、本を手に入れて(買うか、図書館で借りて)、全文を読んでほしい本です。
○「後悔」=「罪の意識」が先、反省はその後
○すぐに「反省の言葉」を述べる加害者は悪質
○反省していない加害者は、まず親や友人に「迷惑をかけた」と感じる
○受刑者は自分が殺めた被害者に対して否定的感情(あいつが悪い)を持っている
○本音を語らないかぎり、受刑者は自分の内面と向き合うことはできません」(p38~9)
○反省文は抑圧を生む危ない方法
○問題行動はその子の内面に抱える「問題」を解決するいいチャンス
○家庭で抑圧されている子は素直な気持ちを他人に言えません。素直な気持ちを他人に言えない子は、 他者といい人間関係を作れず、うまくいきません。
○子どもは喫煙を誘われて、なぜ断れないのか?「断って仲間を外されるのが怖かった」
○形式的な反省は、自分の内面と向き合うチャンスを奪うこと
○被害者の心情を考えさせると逆効果
○自分の本音、否定的感情を吐き出すことが出発点(であるべき)
○「加害者の視点」から始める
○自分の心の痛みに気づくことから真の反省が始まる
○受刑者は「加害者」であるが、同時に親や環境からの「被害者」でもある
○「今実際に学校現場で行われている生徒指導が「犯罪者」を作っている可能性もあります。」
○頑張る「しつけ」が犯罪者を生む
○「弱音をはき、人に頼る」ことができないとモノに依存し、薬やギャンブルに依存するようになる
○尾木ママ方式(いじめられた子の心情を考えさせる教育)ではいじめはなくらない
○小さい子どもが大人の振る舞いをしているのは危険だ
○「ありのままの親」で「ありのままの子」が育つ
○親や周囲から「指示・命令」を受けて来た子ほど、軽微な犯罪に走るのではないか
○いじめ防止教育は「いじめたくなる心理」から始める
○いじめられた子どもの気持ちを(最初に)考えさせると、なぜ「いじめてしまうのか」を
考える機会を奪うのです。
○「強い子にしよう」「勝たなければ」というしつけ、「男らしく」、「女らしく」というしつけ
○逃げることも学ばないと
○問題行動が起きたとき、その子に「反省」させないで、その子も含めてみんなで
なぜそんなことになったかいっしょに考えよう。その子の責任ではない
○子どもは、親から「迷惑をかけられたこと」を考えよう
○いつも使いたい言葉「ありがとう」「うれしい」
○「人に頼ること」を大切にする
○「ありのままの自分」を出せる場を作っていくことが喫緊の課題
この本を読んで、連想した本があります。
本と映像の森31 安冨歩・本條『ハラスメントは連鎖する』 2010年04月24日 05時41分08秒 | 本と映像の森
この2冊をぜひ併せて読んでほしいです。