本と映像の森 306 横溝正史(せいし)著『八つ墓村』角川文庫、原作1949年3月~1951年1月
30数年前、映画『八つ墓村』の広告で「祟りじゃ!祟りじゃ!」というのがあって、つまりおどろおどろしいオカルト小説だろうと思い込んでしまい、ずっと読みませんでした。
次女が「お父さん、これ読む?わりあいいいよ」というので、読んでみました。
金田一耕助探偵が今回はあまり活躍しない副主人公なのですが、以外にまっとうな探偵小説です。推理小説というには推理の余地はあまりないように思います。
でも筋はしっかりしていて面白いです。主人公の寺田辰弥(たつや)は、鳥取県と岡山県の県境にある寒村です。八つ墓村の旧家・田治見家から母とともに2才の時に八つ墓村から逃げた。
つまり旧家の跡取り息子なのだが、祖父が神戸に辰弥を迎えに来たその諏訪法律事務所で突然、その祖父が突然、血を吐いて急死するところから物語は始まる。
八つ墓村に伝わる「落人を村人が惨殺した伝説」と実際に田治見家の当主、つまり辰弥の父が、母と幼児の逃亡後数日で起こした32人虐殺事件とがからみあって、村人の心をむしばんでいく。
つまり第3の惨劇の幕が開くのだ‥。
この惨劇とからみあって、主人公辰弥と3人の女性との複雑な糸のもつれも、極めて興味深いものがある。
つまり西の旧家の未亡人美也子と、辰弥の姉の春代と、辰弥からは従姉妹になる年下の典子の3人である。
舞台は、地上と地下の鍾乳洞になる。後半にいけば、ほとんど舞台は地下に潜り、鍾乳洞の暗黒の中で殺人事件が進行していく‥。
金田一耕助が物語の最初に辰弥に警告したように、最後の。8人目の犠牲者に予定されているのは辰弥であることは確実である‥辰弥は生き延びることができるのか‥。
なお原作とはかなり違う、ストーリーも結末も変えてしまうような映画『八つ墓村』もあるようなので、映画を見る方は注意が必要です。