新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

現場からの医療改革推進協議会に参加

2011-11-05 20:37:02 | 医療

こんばんは

本日は「現場からの医療改革推進協議会」に参加してきました。明日もあるので、早めに帰ってきました。ブログも書きたいですしね。

 

今日のお題は以下のような感じ。

【11月5日(土)】 13:00~18:00
1)開催のご挨拶 13:00
林 良造(東京大学公共政策大学院特任教授)

2)医療改革の現在 13:10~13:50
小野俊介(東京大学薬学系研究科准教授)
松本慎一(ベイラー膵島移植研究所ディレクター)
桜井勝延(福島県南相馬市長)
金澤幸夫(南相馬市立総合病院長)

3)谷口プロジェクト(原発作業員のためにできること) 13:50~14:50
谷本哲也(プロジェクト事務局)
鈴木智彦(フリーライター、元原発作業員)
谷口修一(虎の門病院血液内科部長)
葉山雅(University College London 公共政策修士コース)

4)東日本大震災・福島原発事故I 14:50~15:50
高田明美(南相馬市立総合病院看護部)
長塚智広(競輪選手)
高村泰広(福島県立相馬高校教諭)

5)医師不足 16:00~17:50
井元清哉(東京大学医科学研究所DNA解析分野准教授)
目黒泰一郎(仙台厚生病院理事長)
鈴木 寛(参議院議員)
小松俊平(亀田総合病院経営企画室)
福原麻希(医療ジャーナリスト)

6)ご挨拶
高久史麿(自治医科大学学長)

○懇親会 18:30~20:00
(会費:3000円、場所:医科研生協食堂)

でした。

いろいろ勉強になりました。谷口先生のところの話は「血液内科」としては非常に興味もありました。あの場では僕が発言してもね~と思ったので、何も言いませんでしたが…思ったことは放射線被曝量は推測可能ではないか・・・ということです。

7Gy以上の放射線被曝なら同種移植の適応、4Gy以上なら自家移植が可能なら適応」というのが教科書的な知識であり、これに基づいて…という話でした。放射線被曝後に嘔気が出現するのは有名な話で、骨髄移植の時に行う「全身放射線照射」の時も制吐剤を使用します。

急性放射線障害で放射線被曝を受けた場合、当然予防処置はしていませんので嘔気が生じますが、手元に資料がないから正確なところは(今すぐには)わからないですけど「1時間以内」に嘔気が発生したら4Gy以上にはなるはずですし、30分以内なら…とかもあったような気がしたのですが。

ちなみに谷口先生は・・・本当に患者さんの命を助けることを考えている方だな~と昔思ったことがあります。いい(熱い)先生です。Plerixaforの話も参考になりました(実際に使用して採取した人の話)。

 

とはいえ、一番おもしろかったのはやはり医師不足のテーマでした。

最初の井元先生は以前紹介した「埼玉県は2035年には医療事情は今の2倍悪化する(?):AERAより」の統計的な解析をされた先生です。

 

僕の理解した範囲では・・・今後25年で日本の人口は1600万人減少し、1億1000万まで低下する。仮に医師が75歳(75まで働くのねw)で引退すると定義すると日本の医師数は25%増える。そのため2010年は2.2人/1000人であった医師数が3.2人/1000人に改善(?)するように見える。しかし、2035年は日本の高齢化が進み、実際に患者としてくる可能性がある人が増えるわけですね。確か埼玉県では(自分のメモが読めない・・・汗)60歳以上が1.39倍、75歳以上が2.75倍。で死亡リスクが1.79倍、高齢者の死亡リスクが2.75倍。これを悪化させずに2010年の段階に戻すためにどうするかという計算を統計学的に行うと、労働時間で計算すると40歳未満の医師が168時間/週(笑)で働いても無理だという。そうすると人を増やすしかないので計算すると3.2倍に増やさないといけない・・・。

そのような内容でした。とても面白かったです。

 

二番目の目黒先生は仙台厚生病院の理事長先生で東北福祉大と合同して医大新設を目指している先生です。僕はその話だとばかり思っていましたが、別の・・・そして非常に面白い話でした。

 

やはり僕の理解した範囲では

病院の目指すものとして「総合」「高度」「救急」があり、すべてを目指すと今の医療状況では疲弊してしまう。それ故、その中から二つを取ったほうが良い。仙台厚生病院は「高度と救急」を選択し、それに伴いうまく医療資源を集中運用している。すなわち病床数と医師数を3つの診療科に集中する。同じようなことをしている血液内科の病院というと札幌の北楡病院ですかね。血液に特化した・・・・。

それによって大きな黒字(20億くらいといってたような)が出ているようです。聞く限りでは回転数が早く、患者数も多く、患者の死亡率も低く、入院期間も短い。それなら確かに黒字になる。そこで同じような施設を作って、互いに連携することでやりくりするというものです。

なかなかこの考え方は斬新で面白いな~と思います。以前、群馬大ほか4大学が連携(医局を超えた横の連携実施!:群馬大、4大学と連携)した話もありました。僕はこのBlogを書き始めたころから「新しい医局制度:全医連に対する期待は・・」「医学部定員国管理見直し論:いずれにせよ、医局改革が先だと思う」「後期研修の見直し:すべてのキーワードは「横の連携」かな?」など、縦のつながり(病院でも、診療科でも)が強い日本の医療に何とか横のつながりを強くできないかと書いてきました

僕が考えていたのとは違うのですがこういう横の連携がうまく取れるとよいと思います。話通りに全てが行くかは不明ですが、医療費もベッド数も余裕ができる見積りでした。

ちなみに目黒先生は兵法のような感じで話をされていたので、思わず「ランチェスターの法則か?」と思いましたw

兵法用語ですけど、マーケティングなどでも引用されます。

マーケティング戦略
マーケティング戦略においては、一つの特殊な分野に特化することで、そこまで手を回す余裕のない大企業の隙(ニッチ市場)を突いてのし上がれる。一般化して述べれば、弱者のとるべき戦略は差別化戦略で、敵より性能のよい武器を持ち、狭い戦場で、一対一で戦い、接近戦を行い、力を一点に集中させることである。
ただし、「武器性能の向上」「各個撃破」は、マーケティング戦略では「ひとつの分野に集中する」事に相当するが、「第1法則を適用できる戦場で戦う」という事がマーケティング戦略において具体的に何を指すのかは、難しい所であろう。軍事理論をマーケティングにそのままあてはめるのは、なかなか困難な事である。

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鈴木寛先生は参議院議員ですけど、講演を聞いたのは初めてでした。今日の話を聞いて目からうろこw

以前僕は「医療も教育も財務省が抑制:財務省が日本を悪くする?」「医療と教育は国の礎と未来を作る:国は早急に抜本的な改革を!」「教育と医療の改革を:日本の崩壊を阻止する唯一の手段かな?」とか、いろいろ書いてきました。

今日話されていたのが

事務次官会議をつぶしたのは事務次官会議が閣議の前日に行われて、そこでどこかの省庁の事務次官が否定的な予算配分はできないようになっていたから、予算配分の構造変化を行うためにこれをつぶした。それによって増税を行うことなしで「社会保障費に16%」「教育費6%」アップさせることに成功し、公共事業費は3割下げた。公共事業費を下げたけどできるだけ大きな箱モノ以外(土地を買わなくてよいもの)に金を使っているのでそれなりに公共事業もできている。それによって医療福祉事業の就職67万人増加(10.1%アップ)、教育関連28万人増加(9.9%アップ)

とのことでした。

http://blog.with2.net/link.php?602868

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なかのひと 

小松先生の話もまた面白く新しく書いた論文の話をしてくださいました。

Blogの文字数上限(1万字)が迫っているので簡単に書くと、ぶっちゃけこのままでは2030年には療養型病棟、介護の需要が爆発的に増加し壊滅的な供給不足が起こる可能性が高い(このままでは)。だから、あらゆる方策を駆使して改善させる必要があるという話でした。

ご自身で書かれた新しい論文の話をしてくださり、とても面白かったです。

 

福原さんは医療ジャーナリストの方でチーム医療など取材したことなどから、いろいろ話してくださいました。

チーム医療推進協議会

http://www.team-med.jp/

に関連した話をされていました。

 

うちの大学では「チーム医療」など夢のまた夢(だって看護師数は大学病院なのに10対1、医師数は臨床現場に出ているのは血液内科なのに2人+研修医・・・汗)ですけど、時間を見つけて看護師さんたちと飲みに行ったりもしていました。完全に接待w

 

僕は臨床現場にいた時から常々

「この人数で何とかやれているのは看護師さんたちが頑張って(先日大学に行ったとき、日勤が8時から21時まで、名が日勤は8時から24時過ぎまで働いているといわれてびっくりしましたが)いるから」

だと言っていましたが・・・本当に医療従事者全体でいろいろ考えていかなくてはならないと思います。

 

さて、明日に備えて・・・って明日は9時からか・・・

 

逆算すると7時くらいにここを出ないといけないわけね・・・・。

 

それでは、また。

コメント (6)
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がんの民間療法に関して:勝俣先生のブログを参考に

2011-11-05 09:22:04 | 医療

おはようございます

 

今日は朝食をパンで取り、このあと軽いジョギングに行こうと思っています。一応食後2時間は運動は控えるようにしています。

フェイスブックを見ていた時に国立がんセンターの勝俣範之先生(もとだね)をお見かけして、転勤とブログの存在を知って先ほどブログを見ておりました。ちょうど関心のある話題だったのでご紹介します。

腫瘍内科医 勝俣範之のブログ

いろいろと腫瘍内科を立ち上げるにあたってご苦労されていらしゃるようなのですが、個人的にはこっちのほうが(w)

インチキ治療の見分け方

 

僕は若輩ではありますが、血液内科の診療(外来・入院)では積極的治療~緩和ケアまでやっていました。患者さんから「~に関して」質問を受けることもよくありましたが

「○○さんは今、標準治療で治療を行っています。標準治療を行っている間は、個人的にはこのような治療法に手を出さないほうが良いと思います。どのような有害事象が起きるかはわからないですし、どのような患者さんに効果があるかもはっきりとはしません。もし仮にこの治療が効果のあるものだったとしても、個人個人で条件は異なりますので○○さんに効果があるかは不明です(○○さんの行っている抗癌剤治療をやりながら治療した人がどれだけいるか・・・)」

そのような話をして大体止めています。しかし、以前にも書きましたが僕がやっているのが緩和ケア(延命のための抗癌剤治療+疼痛管理、その他)であれば

「▽▽さんのお持ちになられた薬の効果は僕には保証はできません。ほかの治療と併用ですから・・・副作用も出るかもしれません。しかし、僕が行っている治療は治す方向に持っていく治療ではなく、進行を少しでも遅らせて時間を作るだけのものです。もし、その治療を行ってみたいという希望が強いようでしたら、そのことをご理解の上であれば僕のほうはサポートをします」

と、個人責任で+サポート全力体制。これって混合診療ではないと思うのですけど・・・たぶんw

このような話を受けてそんなに高い薬ではなかったですけど、薬を購入された方がいたり・・・やめられた方もいたり。治験(というか病院がやっている免疫療法)を受けるための紹介状を書いたりもしました。

 

そんなこともありいくつかの団体さんのホームページを見たりしたのですが

病院での治療でこれ以上難しいという話になった後、主治医と相談してきてください

という団体さんと

がんは自然治癒する。病院に行くのは間違いである

という・・・おいおいという団体さんがいたりします。

http://blog.with2.net/link.php?602868

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なかのひと 

後者は絶対におかしいと思うのですが、勝俣先生のブログの記事を参考に考えてみてください。

 

走った後、少し医療制度の勉強に行ってくる予定です。最近そういう話から遠ざかっていたので・・・。

 

では、また。

 

P.S 第1回 医学生・研修医のための腫瘍内科セミナーをふと思い出しましたw

コメント (2)
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