新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

診察が最も重要:検査は所詮検査でしかない・・・

2011-11-28 20:43:27 | 医療

さて、続けます

 

この記事を読み、Yahooのコメント欄でいろいろ書かれているのを見た後に、MRICのある記事を読みました。両方紹介しますので、コメントください。

 財務相の諮問機関である財政制度等審議会(財政審、会長=吉川洋・東大大学院教授)は28日、財政制度分科会を開催し、2012年度予算編成における社会保障分野の課題を議論した。中央社会保険医療協議会(中医協)の森田朗会長らから意見聴取。森田会長から12年度診療報酬改定の審議状況について聞いた後に意見交換したが、分科会の委員から「引き上げを容認する」意見は出なかった。

 この日の会合では、中医協の森田会長のほか、社会保障審議会(社保審)介護保険部会の山崎泰彦部会長、日本医師会(日医)の中川俊男副会長、医療法人鉄蕉会の亀田隆明理事長からヒアリングを行った。会合後の記者会見で、財政審の吉川会長は「診療報酬を引き上げるべきという意見はなかった。現状で引き上げるのは、国民の理解が得られないとの意見が何人かの委員からあった」と述べた。
 
 このほか、診療報酬と医師の給与に関連して分科会委員から、ドクターフィーについての考え方を聞かれた日医の中川副会長は、「医療機関の経営原資の主たるものは、広く薄く支払われる診療報酬。ドクターフィーの考え方はなじまない」との見解を示した。また受診時定額負担制度について、鉄蕉会の亀田理事長は「いろいろな病院に何回も行く患者もいるので、受診時定額負担を導入すべき。ただ、前回の診療報酬改定による病院の雇用増加を鑑みて、病院の医師等に関わる診療報酬のマイナス改定は避けるべき」との考えを示した。

■介護報酬のメリハリ「24時間巡回サービスなどで質向上に対応」
 12年度の介護報酬改定の審議状況は、社保審介護保険部会の山崎部会長が説明した。介護報酬改定について分科会委員から、「介護報酬の中で、メリハリをどのように付けていくのか」との質問が出た。これに対し山崎部会長は、「地域包括ケアの概念の中で、24時間巡回サービスを実施するなどして、介護サービスの質を高める対応を行う」と述べた。

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この記事の中の一部だけ抜粋させていただきます。
「(中略)こういった恣意的な発表をもとに診療報酬増額は国民の理解が得られないとのキャンペーンが始まっているが、本当にそうだろうか?医療が崩壊してしまったら一番困るのは国民である。このような報道は、明らかに世論を間違った方向に誘導する。

もう一度言う、この国の医療をどうしたいのか。マスコミは、恣意的な発表をせず、もっと勉強して正確に伝えてほしい。国民皆保険の医療は、国の根幹をなす大事な分野である。いざという時のセーフティネットは、年金より医療である。財務省主導で目の前のお金の配分を決めれば済む話ではない。」

医師の外来診察技術料が70点(700円)という赤字必須の診療報酬からさらに減額させられるとどうなるかご存じだろうか。診療所では、無駄な検査と余分な治療が増えていく。頻回な受診が求められる。開業当初は、純粋な気持ちで向かい合っていても、借金を背負って背に腹は代えられなくなっていく。気持ちも荒んでいく。周囲を見渡せばこんな開業医がたくさんいる。今でさえギリギリである。」
1回の診察料が700円では無理である。今やろうとしていることは、さらにこれを下げようとしているのである。じっくり話を聞いて、最小限の検査で済む価格設定にしてほしい。一人の患者が同じ日に何科受診しても、医師の技術料は1回分70点のみで、調剤薬局では、ガスター処方で81点アローゼン処方で81点と、どんどん積み重ねられていくのは何故か、しかも、これらのおかしな価格設定は決して医師の目に触れられることのないようなシステムになっている。官僚は余程医者が嫌いらしい。」

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恣意的な…のところは記事本文をお読みください。すべて重要ポイントを抜粋すると、記事本文に誰も行かなくなりそうなのでw

 

僕は両方の文を読んで一つだけ国民の皆様に知っていただきたいことがあります。

 

医療は医師が重要なんです

 

・・・・って書くと「馬鹿か。それくらいは知っている」と言われてしまいそうですが(笑

 

医師が診察して検査前の確率を見積もることで、診断確率が上昇します

 

例えば、胸痛で受診(あえて血液内科医が癌以外で行きますw がんの診断は最終的には病理診断ですので)した患者さんがいたとします。

胸痛と言われていやだな~と思うのは心筋梗塞や不安定狭心症などの心臓関連の疾患があります。ほかにも呼吸器関連(気胸、肺炎から胸膜炎、膿胸など)、血管系(大動脈解離とか)、消化器系(GERDや特発性食道破裂なんかも教科書的ですか?)、骨格筋の痛みなんかもあるかもしれませんね。

 

ここに診察で痛みは労作時(動いた時)に悪化して、安静で数分で収まる(なんか狭心症かも…という病歴)深呼吸などでは痛みは増悪しない(呼吸器ではなさそう)。消化器症状を伴わない(確か論文か何かで、心臓と消化器系の胸痛との鑑別として、否定はできないが消化器系に多いとはされている)。とか、病歴が聴取されていく

ここで既往歴に糖尿病・高血圧・高脂血症が加わったら心臓・血管系を考えます。年齢が65歳以上(でしたっけ?)が加わったら、さらに点数が上昇しますね。

で、診察で脈の左右差はない(友人は脈の左右差で大動脈解離 Stanford Aを診断しました。これはやはり重要な所見です)とか、心音がどうだとか・・・・。

 

そして心電図で~(発作時の心電図があれば・・・)とかですね。

条件がバリバリに整ったら、アメリカだったら負荷心電図とかしないでしょうね。日本でもしないかな・・・。検査をする理由が診断のためにするのであれば・・・必要がないこともあるし、条件が悪かったら負荷がかかりすぎるかもしれない。まぁ、重症度の確認にはなるかな?

 

僕が言いたいのは…診察が最も重要ということと負荷心電図をとる必要がないのに取らなくては診療が成り立たない構造になっているかもしれません…ということ。

 

有名な話をもう一つ書きます。

HIVの検査の感度(HIV感染者を陽性とする割合)・特異度(HIVでない人を陰性とする割合)は高いのですが、有病率が日本ではあまりに低いために偽陽性ばかりになる

下のパワーポイントは僕が研修医のころ(地域医療とかでですかね。比較的時間があって)作ったスライドの一部(38枚ありましたw)です。

 

この有病率というのは実際の患者さんがいる割合ですけど、()で書いていますが検査前確率です。一般の検査はこんなに感度も特異度も高くないので、いかに検査前確率を上げるかが勝負になってきます。

すなわち、診察です。

内科医は不要?:ベイツの定理と診断確信度

という記事でも書いていますが、どれだけ検査が発達しようとコンピューターが発達しようと、おそらく医師の出す検査前確率によるところが診断に寄与するところは大きい。そして診断の確率をどう見積もるかで「検査」「診断」「治療」と進むわけです。

 

この辺の医療の可能性は過去にも記事にしてきましたし、上記MRICの記事でいろいろ書いてあるので割愛します。

 

ただ、

1、医師の診察の重要性に関しての理解してほしい

2、その重要なところが医師不足のために短い時間しか取れない

3、そのため検査が増える

4、検査をしないと診療所や病院が成り立たないから増える

5、かなり不足している医師数でぎりぎり持たせている日本医療に「訴訟」の話が出るようになって、万一の可能性を考えたため検査が増えた

と、強調させてください。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます(読んでくださった方の時間を無駄にしていませんように)。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。

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自転車の自己誘発責任:自転車も保険はいらないとダメかしら

2011-11-28 20:12:50 | Weblog

こんばんは

 

今日も一日が終わりました。しかし、寒いですよね。行き帰りの自転車通勤時に「寒い」と思いながら、自転車をかっ飛ばしています。

 

そんな(スピードだしすぎの)自転車通勤をしているので、この記事は気になりました。

 大阪市浪速区で5月、タンクローリーが歩道に乗り上げ、歩行中の男性2人が死亡した事故で、自転車で車の前を横切り事故を誘発したとして、重過失致死罪に問われた無職越智茂被告(60)に対し、大阪地裁は28日、禁錮2年(求刑禁錮3年6月)の実刑を言い渡した。
 真鍋秀永裁判官は「車の回避行動は異常とはいえない」として、横断行為と事故との因果関係を認定。「被告の注意欠如は甚だしく、安易で身勝手な行動が重大な結果を招いた」と指摘した。 

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大阪・タンクローリー事故 事故引き起こし実刑判決の自転車の男「俺が悪いんですか」

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20111128-00000457-fnn-soci

フジテレビ系(FNN) 11月28日(月)17時22分配信

大阪市浪速区で2011年5月、タンクローリーが歩道に突っ込み2人が死亡した事故で、直前に自転車で道路を横断し、事故を引き起こした男に、大阪地裁は禁錮2年の実刑判決を言い渡した。
大阪市浪速区の国道で2011年5月、タンクローリーが歩道に突っ込んだ。
しかし、禁錮2年の実刑判決が言い渡されたのは、運転手ではなく、自転車に乗っていた男だった。
事故現場の道路には、大量の血痕が残されていた。
この事故で、歩道にいた49歳の男性と75歳の男性が、住宅と車の間に挟まり死亡した。
事故当時、警察は、タンクローリーを運転していた男性を現行犯逮捕したが、のちに処分保留で釈放した。
タンクローリーの運転手は「隣の車線を走っていた車が、急に車線変更してきたので、当たると思い、ハンドルを切った」と話した。
隣の車線を走っていたワゴン車の運転手も、処分保留で釈放された。
この事故で、重過失致死罪で起訴されたのは、自転車に乗っていた越智 茂被告(60)だった。
なぜ、越智被告だけが起訴されたのか。
自転車に乗っていた越智被告は、信号機のない道路を安全確認をせずに横断し、その自転車を避けようと、ワゴン車が進路を変更した
さらに、ワゴン車を避けようとしたタンクローリーが、歩道に突っ込んだという。
事故のきっかけは、自転車だった。
28日、大阪地裁の真鍋秀永裁判官は、「注意の欠如は甚だしいばかりか、信号待ちという当然の事柄を嫌がり、周囲の交通に多大な影響を及ぼす行為に自ら進んで出たもので、安易かつ身勝手である」とし、越智被告に禁錮2年の実刑判決を言い渡した。
判決後、何か述べたいことがあるかと聞かれた越智被告は、「俺が悪いんですか。向こうは車で殺したんですよ」と、強い口調で言った。
事故からおよそ4カ月。
2人死亡という事故が起きた現場では、ルールを無視して横断する自転車があとを絶たなかった。

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まぁ、因果関係はともかく(たぶん、否定はできないと思うけど)、自転車+歩行者+車が絡んだ事故で自転車の責任とされた。

 

個人的には「俺が悪いんですか。向こうは車で殺したんですよ」といわれたら、「あなたが悪いと思う」と言いたいし、人によっては「たった禁固2年かよ」と思う人もいるかもしれない。

が・・・事故の責任を取ることになると、賠償金の問題が出てきます。うちの職場の上司も言っていたのですが、自転車には乗用車やバイクと違って保険は(多分)ないので、全額自費ですよね

 

この方にはつらい未来が(家族にも)待っているかもしれません。

 

僕は信号無視はしていませんし、子供の飛び出しなどにも注意していますが…スピードは出しているからな(車と並走)w

自転車も保険に入らないと危ないかもしれないですね

 

そんなことを思いました。

 

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