AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

下腹部消化器症状に対する針灸治療様式

2006-04-04 | 腹部症状
 下腹部臓器は交感神経優位群(小腸、虫垂、下行結腸までの大腸)と副交感神経優位群(S状結腸~直腸)に分けて捉えるべきであるが、前者の交感神経優位群は、別項の「中腹部消化器に対する針灸治療」のブログで説明した。また泌尿器臓器や婦人科臓器に関しては個別に解説する予定である。ここでは副交感神経優位群について記述する。

1.副交感神経優位内臓(S状結腸~肛門)の特徴
 S状結腸~直腸は、交感神経支配(L1~L3)は弱く、副交感神経支配が強いのが普通である。骨盤部臓器の副交感神経は、骨盤神経(S2~S4)により反応が伝達される。ただし副交感神経は体性神経系と連動していないので、圧痛や硬結とった明瞭なツボ反応は示さない。

2.陰部神経について
 内臓全般は自律神経が支配しているが、意志による制御ができる部分、すなわち脊髄神経が支配する部分がある。その脊髄神経とは、横隔膜神経(C3~C4)と陰部神経(S2~S4)である。横隔膜神経は、意志による呼吸調節をある程度可能にしている。また陰部神経は、その運動線維はシモの穴の括約筋を支配し、大小便の我慢を可能にしている。一方陰部神経の知覚線維の興奮は、シモの痛み(生理痛、排尿痛、排便痛)を生ずることになる。要するに骨盤内臓器症状を生じる主要原因となっているので、刺激する機会は非常に多い。

 陰部神経は、S2~S4から出て、肛門→膣口→性器と、体幹前面に回り込み、恥骨を上行して関元穴あたりで終わっている。臨床的には次りょう~下りょう穴の後仙骨孔(中心はS3の中りょう)や中極刺針を用いることが多い(確実に命中させるには陰部神経ブロック点刺針を行う)。
※陰部神経ブロック点刺針については、泌尿器科症状の項で詳細に解説する予定

3.下腹部消化器内臓症状に対する針灸治療様式
 骨盤神経刺激 → 中りょう
 陰部神経刺激 → 中りょう、中極、陰部神経ブロック点