玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*夏休みの宿題

2008年07月22日 | 捨て猫の独り言

 私には夏休みそして冬休みは今年限りになるだろう。そのうち縛りがない毎日になるとどんな生活になるか。そんな先のことなどわかるはずもない。去年の夏もこれほど暑かっただろうか。そんな昔のことさえもう忘れているのに。しかしこの夏は私に二つの宿題が出された。そのうちの一つは山崎豊子の長編小説「不毛地帯」を読むことである。同僚が私の机の上に文庫本4冊を黙って置いた。積みあげると10センチある。

 もう一つは自ら思い立ったものだ。短歌を毎日2首ずつ暗誦することである。篠弘編著の「現代の短歌(100人の名歌集)」からランダムに2首選び朝ノートに書き写す。寝る前に一字一句復唱できるようにする。詠む前には読まねばならないと思った。同居人は「数独」だが数字が苦手な私は5句31音の言葉遊びを選んだ。暗誦などとは久しく取り組んだことがないから中学高校生に戻った気分が新鮮だ。2つの宿題を誠実に取り組めば安上がりの暑気払いができるというわけだ。

 小説のあらすじはつぎの通りである。主人公は11年間にわたる過酷なシベリア抑留生活のあと総合商社に入社する。日本の繁栄を支えてきた国際商戦の世界もまた汚辱にまみれた世界であり荒涼たるシベリアと同じく不毛地帯であった。この作品の連載中にロッキード事件が起こる。小説が時代を先取りしていた。守屋政務次官の事件は記憶に新しい。私は四部のうちまだ一部の半分ほどを読み進んだばかりである。

 NHKハイビジョンで朝7時直前に日めくり万葉集という5分間番組がある。檀ふみさんが朗読している。残念ながら見逃すことが多い。さて毎日2首選びをしながら風変わりな歌詠みの香川ヒサ(昭和22年生)を知った。例えばこうである。「わたしには世界の果ての私がコーヒーカップをテーブルに置く」 「たとへもし世界が滅んでしまってもそれも世界の出来事である」 また別の女性歌人のものだが解釈に自信が持てず気になっている歌がある。「わたしはもう灰なのよとひとつまみの灰がありたり石段の隅」

コメント
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