先週の月曜から木曜までNHK衛星第2は夜9時から刑事コロンボの4作品を放送、そのうち前半の2夜は「私が愛したコロンボ」と題したトーク番組も放送した。NHKハイビジョンは毎週土曜日の夜7時から刑事コロンボを放送している。それをふくめて私は先週5本の刑事コロンボを視聴したことになる。先週は金曜と土曜だけの勤務であったことが幸いした。振り向きざまに犯人に問いかける「あと一つだけ(Jasut one more thing)」という仕草を私の身体が真似ようとして困る。
関根勤、デーブ・スペクター、三谷幸喜が出演したトーク番組も興味深かった。原作者はストーリーとセリフを分担してR・レビンソンとW・リンクである。二人の共同作業で創られていた。コロンボの性格はドストエフスキーの罪と罰に登場するペテローヴィチ予審判事からヒントを得た。刑事コロンボは1972~79にかけてNHKが放送した。対抗してTBSが1975~79にギリシャ系のスキンヘッドの刑事コジャックを放送した。刑事コロンボは旧シリーズ45、新シリーズ24の合計69の作品が残っている。内容異質だが日本における男はつらいよシリーズは全部で48作品である。
放送にあたりNHKには、つぎのような不安があった。①最初から犯人がわかってしまう②主人公が小柄でよれよれのオヤジ③アクションシーンがほとんどない④ヒロインやレギュラーのサブキャラがいない⑤主人公が15分ほど登場しない⑥伏線が多く複雑で集中しないと筋についていけなくなる。考えられた不安要素は以上であるが、私は特に⑥の意見が興味深い。いわゆる両刃の剣(つるぎ)で、これこそ番組の最大の魅力と思う。犯人が医者や弁護士、会社重役など社会的成功者であることも、幅広い支持を得た要素の一つだろう。
旧シリーズ45作品のすべてについて研究したサイトがあった。作品ごとに①キーイメージ②犯行の動機③コロンボはどこでピンときたか④犯行を裏付ける動機⑤コロンボはいかにして決着をつけたか等の項目について述べている。ネットの便利さにまたしても感じ入る。先週私が見たのは「別れのワイン」「逆転の構図」「二枚のドガの絵」「パイルD-3の壁」「ハッサンサラーの反逆」である。それらの中の「逆転の構図」に出てくるつぎの場面はしばらく忘れないだろう。シスター(慈善団体の一員)はコロンボのよれよれのコートを見てホームレスと思いこんだ。コロンボが警察関係の人間だというと、今度は変装しているのだと思いこんだ。コロンボは苦笑するだけだった。(写真は春を告げる福寿草)