新聞販売店から格安料金の映画のチケットを手に入れた。上映は10月2日で開始は14時である。場所は自転車で25分の市民会館である。主催は西東京シネマ倶楽部という。この映画についての予備知識はまるでなかった。「格安」にひかれてなんとなく見に行こうかということになった。安さにひかれる習性は改まらない。いまだに食料品などではディスカウント商品の方に手がのびる。これらは「清貧」ということとはまったく別次元のことだろうと自覚している。予想通り入場者はほぼ私のような年代の者で占められていた。
映画は「最後の忠臣蔵」という。討ち入り前に失踪した孫左衛門(役所広司)と討ち入り後に密命を受けて逃亡を装った吉右衛門(佐藤浩市)を軸に物語は展開する。孫左衛門が使命を果たした後に、大石内蔵助に殉じて切腹する最後の場面には思わず目をそむけてしまった。駈けつけた吉右衛門に介錯無用と孫左衛門は自ら頸動脈をかき切ってしまう。使命を果たした孫左衛門(主人公)に「これからは自分のための生活を始めよう」と観客である私は感情移入していたのに、みごとに裏切られてしまった。いつものように映画を見た後でいろいろネットで調べてみた。それらを私なりに整理してみた。製作は「ラストサムライ」「硫黄島からの手紙」などを手がけたワーナー・ブラザーズである。
昨年12月の映画の完成披露会見での出演者の発言がこの映画についての十分な解説になっていると思う。役所広司は「これほど主(あるじ)に忠誠を尽くし、最後も主の元へ行くのを喜ぶような美しくも不思議な侍(さむらい)の生き方。だが彼等は確実に僕達の先祖である。伝えていかなくては」と語る。佐藤浩市は「僕自身を含め忍耐だけでは済まない「忍(しのぶ)」という美しさがどれだけ伝わるか」が見どころと語る。杉田監督は「倹約を旨とし、清貧を美とする。己を律して人のために尽くすことを善とする。こうした日本人の美意識は世界に誇れる資産です」と語っていた。