これまでに青春18きっぷを利用して福島を二度訪れている。一度目は水戸と郡山を結ぶ水郡線に乗り磐城浅川駅で降りた。福島南部の東白川郡鮫川村の山中に知人を訪ねるためだった。二度目は原発事故の影響で寸断された常磐線に乗り太平洋側を北上した。行けるところまで行って引き返したのが広野駅だった。そしてこの週末には一月前から予約していた会津若松方面へのパック旅行に参加した。
旅のテーマは福島の桜である。ところが出発の前の列島の気温はぐんぐん上昇して桜の開花が例年よりかなり早くなった。桜については諦めるしかない状況だなと思った時もあった。ところが幸運にも、終わってみればあちこちで満開の桜に出会うことができた。桜はかくのごとくに人の心を騒がせるものである。今回訪れる桜の中で最も重要なのが日本三大桜の一つの「三春の滝桜」である。19日の金曜日に新幹線の郡山駅からバスで滝桜に直行した。
添乗員さんとバスガイドさんのどちらも女性でどちらも経験豊富だった。滝桜が14日の日曜日に満開になったということは事前に知っていた。満開が過ぎたといえ、名高い滝桜のことだから到着までにかなりの渋滞があるだろうと予想していたが、それはみごとに外れた。滝桜の入口には開花状況のたて看板があった。つぼみ、咲き始め、三分・五分・八分咲き、満開、落花しきり、落花の8段階になっている。そしてこの日の矢印は「落花しきり」を示していた。先週末の満開の頃ならさぞかし滝桜をめざす人ですさまじい混雑だったのだろう。日程が満開の時期でなくてむしろよかったと思った。
地図で見ると猪苗代湖の周辺を反時計回りに移動したことになる。福島では梅と桜と桃の花を同時に愛でる。三春町から福島市の花見山公園、二本松市の霞ヶ城公園を訪れ、安達太良山と磐梯山にかこまれた標高千メートルの横向温泉に泊まる。翌日は山を下りて猪苗代湖畔を走り会津若松市内へ。車窓には常に磐梯山がある。大河ドラマのオープニング映像に登場する石部桜、白虎隊の飯盛山、鶴ヶ城(若松城)を見学する。最後は南会津郡にある江戸時代の宿場町である大内宿だ。会津の食べ物はどれも洗練されている。三度目でやっと福島の風土の一端にふれた気がした。今日の朝刊の一面に「真冬に逆戻り」の見出しで雪の石部桜と観光客の写真があった。