玉川上水の鈴木教室の観察会はその節気の最初の日曜日に行われる。節気の展示のポイントやその日の観察会の目標などの説明の後に2時間ほど散策して再びギャラリーに戻る。鈴木さんには展示の準備などの大変さもあるが、それよりも自然の仕組みの不思議さの追及に飽きることがないようだ。小雪はツワブキ、大雪はビワ、冬至はサザンカの花と節気ごとに何かの花が咲きだすことにも感動している。最近ではクモやアブなどにも観察の範囲を広げている。
鈴木さんには毎回ほぼ同じ顔触れの観察会参加メンバーを飽きさせないようにしたいという気持ちがおありだろう。私のようにできの悪い生徒は毎年毎回同じことの繰り返しでも十分なのだが、観察会ではいろいろと工夫されている。ともあれギャラリーの展示と観察会が、こんなにも長く続いている原動力は、鈴木さん自身の枯渇することのない若々しい好奇心にあることは間違いない。
11日の大雪の観察会はウラギンシジミと、ヤマガラが主な目標だった。ウラギンシジミは翅の裏面が真っ白、表面が濃茶色である。幼虫の食草はフジとクズで年に2回世代交代する。鈴木さんは成虫越冬するウラギンシジミに出会ってから10年になるが、休眠する場所を決定する瞬間を目撃したのは初めてと興奮気味だ。つい先日動かなくなるまで行動を観察していたという。日当たりのよい場所にあるツバキの葉の裏に一枚の紙切れにしか見えないウラギンシジミがぶら下がっていた。
シジュウカラ・ヤマガラ・コゲラ・エナガなどの留鳥は夏の間は主に昆虫、冬は木の実を食べる。厳しい冬を生き抜くためだろうか冬になると混じり合って群れを組んで行動するという。鈴木さんは12月に入ると朝の散歩の折に小川水衛所跡の柵を餌場にして、秋に拾い集めたハクウンボクの実を置くことを続けたという。ヤマガラの撮影のためである。はたして観察会の日に鈴木さんが餌場にハクウンボクを置くとしばらくしてヤマガラが飛来した。シジュウカラも飛来するようになった。小梢を見上げる観察会のメンバーが気になるのか、水衛所跡には散策中の人たちが立ち止まり、かなりの人だかりができ始めた。