ほとんど娘の自宅で生活する日々だから、移動の連続である旅という範疇には入らないかもしれない。爺と婆が留守番を頼まれて出かけたという趣である。留守番をする家が遠く離れたアトランタだったというにすぎない。定点観測であっても、異国ゆえに見るもの聞くものすべて新鮮だった。元日に大西洋を望むビーチを散策したのは特別だった。
車社会ということが強く印象に残った。広い国土ゆえに、網の目のように張り巡らされたインターステートと呼ばれる高速道路が各州の主要都市を結んでいる。ガードレールや防音壁や料金所などのない道路が、なだらかな丘を越えて続いていた。もちろん日常の食料品などの買い出しも車だ。それもまとめ買いが多い。
子供たちは黄色のスクールバスに乗って学校へ行く。運転しているのはパートタイマーの主婦だという。時間に遅れても走ってくれば待ってもらえる。小学生は親が送り迎えするケースが多いようだ。娘によるとアジア系の親は一般に教育熱心だという。公表される学校のランク付けを見て引っ越しをしたりするそうだ。
滞在中は濃霧の朝や、夕刻の豪雨に見舞われたこともあったが暖かい日の方がはるかに多かった。ジョージア州のニックネームはピーチステートで、車のナンバープレートにはその「桃」が描かれている。帰国の翌日からアトランタも東京も急激に寒くなった。成田空港から帰る途中に、これまで見慣れていたはずの女子高校生の短いスカートになぜか違和感を覚えた。