8月28日の夕、安倍首相は辞任を表明した。「持病再発」と聞いたとき、「仮病を装い政権放り出し」という確信にも似た思いが浮かんだ。この方の言い逃れの才能は群を抜いている。真実はそのうち明らかになるだろう。その後の自民党の動きを見ていると「なんて世の中だ」はまだまだ続くとみた。気分は一向に晴れない。
アベ政治の「総括」に最も適した人物は、「日本会議の正体」や「安倍三代」などの著書があるジャーナリストの青木理(1966年生まれ)だろう。彼が述べるところを要約してみる。《「安倍三代」というルポルタージュを書く際、幼少期から青年期、サラリーマン時代を知る人たちを多数取材しましたが、政治への志のようなものを聞いたという人はいませんでした。世襲政治一家に生まれた平々凡々なおぼちゃまにすぎません。
かわいがってくれた祖父・岸への敬慕に起因する右派イデオロギーはあったかもしれませんが、それも改憲運動を進める日本会議系の人たちに目をかけられ、育てられたからでしょう。薄っぺらなナショナリズムを煽る言動の数々は、あとづけの浅知恵でしょう。森友・加計が致命傷にならなかったのは、検察が捜査せず、野党が弱く、メディアの追求も手ぬるかったことに尽きます。
02年の日朝首脳会談を契機に高揚した反北朝鮮ムードが彼の政界での橋頭堡になり、かつては「極端な右の片隅にいる変わり者」と目された連中が政界の真ん中を堂々と闊歩するようになってしまいました。そういう連中が彼をプリンスとして育てた面はあったでしょう。ただ僕たちは冷静に考えた方がいい。たとえば拉致問題を本当に解決したいのであれば、韓国とけんかしている場合ではないはずです。晋三の大学時代の恩師の加藤節・成蹊大名誉教授に安倍政権の評価を尋ねたら「二つのむち」という言葉が返ってきました。「無知」と「無恥」》