3泊した五竜館は、白馬八方尾根スキー場を仰ぎ見る場所にあった。窓からは、乗り継いで尾根に向かうリフトが見える。それに東京の水道水と比べると、ここで飲む水は格段に美味い。そして1998年の冬季オリンピックのジャンプ競技の会場となったジャンプ台も見えている。3日目の朝食後に近くを散策する時間があり、なにはともあれジャンプ台の見学に行く。
観光客はジャンプのスタート地点までリフトで上がって見学できる。この日は選手たちが練習でつぎつぎに飛行していた。それを間近に見ていると、オリンピックの当時のテレビ映像が思い出されてくる。舟木和喜の金と銀、原田雅彦の銅、そしてクライマックスはジャンプ団体の金だ。五竜館にはメダリストたちの寄せ書きが飾られていた。あの時、オリンピックは心から歓迎されていた。
バスは朝8時に出発して2時間半で上高地に着いた。本来の漢字表記は「神垣内」だという。途中、雪を抱いた北アルプスの山脈や、麓の黄葉などの景色に心が浮き立つ。そして梓川は松本市内で犀川となり、長野市で千曲川と合流し、新潟県で信濃川となる。いわゆる信濃川水系である。梓川をさかのぼると、稲核(いねこき)、水殿(みどの)、奈川渡(ながわど)の3つのダムがあった。
標高1500mに、これほどの広さの平坦地は他に例がないという。この日は、ときおり粉雪がちらついた。河童橋近くの観光センターからタクシーで大正池まで行き、そこから再び上流の河童橋を目指すこと60分、アップダウンはほとんどない。焼岳の噴火で大正池が出現し、やがて池は土砂で埋められて湿原となる。途中、倒木が朽ちて苔むしている姿が印象に残った。