家の中のものを整理していると二人の子供たちが幼かったころのものが出てきた。小学生や中学生の頃の図画工作や書道の作品である。壁面の一角にコーナーを設け、出来がよくて処分しきれずに残った絵などを部屋飾りとして楽しむことにした。
家の中には世界的に有名な画家の複製も飾ってあるが、子供のものは世界に一つだけの作品というわけだ。いくつか保存したので、ときどき取り換えることにしよう。今では子供たちはそれぞれ忙しくてこの育ったこの家に帰ってくることは、まれである。この感傷的な行為はいささか気恥ずかしいことではある。
最初に飾ったのは長男が小学6年の時の水彩画「消防車」だ。つぎは長女の版画でも飾ろう。二人の子供は小学生ときに日記をつけていた。もう40年近くも経過したので覗き見しても許されるだろう。長男の方は日記の習慣が続いたようで、小さな文字でぎっしりと書きこんだ浪人、大学時代の手のひらサイズの手帳も出てきた。暇な折に少しずつ読むことにする。
ある医院の待合室の掲示板に、共感する記事があったのでメモしておいた。人は死んでどうなるのかという問いかけに対して「人は死んだらみんな”思い出”になる」と答えたという。「あの世はどんなとこだろうね」と話し合っていたら、一人の認知症のおばあさんが「どうもいいところらしいよ・・・・誰も帰ってこないから」