玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*宿無し弘文③

2023年02月20日 | 捨て猫の独り言

 弘文の弟子たちの証言を見てみよう。①迷える人は無数にいるが、すべての人を助けたいと願う、つまるところ僧侶とは誓願だと言いますが、弘文はまさに”誓願の人”でいた。②「みんなは、禅は瞑想だと思っている、でも、そうじゃない。禅とは掃き清めることなんだ」私はこれを、禅とは時空間を整え、物事をできる限りシンプルに保つことと理解しています。

 ③禅イコール試練、自分はどこまで耐えられるか、それに挑戦するというような捉え方をしてまいました。そんな僕に弘文はひと言「エンジョイ禅」と言ったのです。④弘文はリベラルで、ちょっと風来坊。ヒッピー的人間には理想的な師でした。それに多分に天然ボケで完璧からは遠い人だった。⑤弘文の説法は長い間とスローモーで有名でした。間が始まると、いつ話が再開するかわからないのだから聴いてるこちらも大変です。

 ⑥弘文は精神的な賢者であるかたわら、未熟な少年でした。約束をすっぽかす、お酒にだらしない、お金にもルーズ。⑦大好きだったな弘文のこと。物静かな中にもカリスマ性のある本物の僧侶でしたよ、あの人は。まぎれもなく僧になるべく生を享けた人です。⑧弘文は女性に対していつも受け身でした。「女が男を選ぶ、男は女を選ばない」とも語っていたし、女性の直観力や決断力には常に一目置いてもいました。

 ⑨ヨーロッパにおける従来の禅のイメージって完全にマッチョだったんですよ。厳格で軍隊ぽくってビシバシって感じ。反対に弘文はフェミニンでフレキシブル、包み込むようなスタイルだったので親しみを抱いたひとが多かったですね。思えば弘文はほかの日本人禅僧と異なり、西洋哲学と比較しながら禅を語ることができました。⑩弘文は無口で他人のことはめったに話さず、目の前に起きている事象だけを語る人だった。ある時「世の中で一番大事な事は?」と尋ねたら「この世にいることに敬意を抱くこと」と答えたことが忘れられない。

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