埼玉県越生(おごせ)町は梅林で名高い。JR八高線の越生駅までは我が家から90分の近場だ。その越生に強アルカリ性乳白色の温泉を楽しめるホテルがあり、しかもこの時期だから格安という。多くを期待しないようにと自分に言い聞かせて出かけた。ランチは駅から12分で「野菜中心の籠盛り」がメニューの「仙人小屋」が第一候補だ。
JR越生駅は無人駅で駅前には太田道灌の像と巨大看板があり、越生は太田道灌ゆかりの地であることを知る。仙人小屋は週4日の営業で生憎この日はお休み。越生梅林近くのホテルを目指して歩き始め、道路沿いの老舗蕎麦屋さんの「よしひろ」で昼食となる。食事の後に出会ったワンダーランドは衝撃的だった。道路を挟んだ両側の広場にありとあらゆるガラクタが無秩序に並べられ、妖しい魅力が辺り一帯に漂う。
駅からホテルまで4㎞を歩く。ハイキングコースでなく、車の多い大通りを歩いたのは下調べが不足していた。その代わりにワンダーランドに出会えた。夕食時に地元の佐藤酒造店の「越生梅林」の「利き酒セット」を試した。途中に数多く見かけた「越生梅林」の幟は酒の銘だった。酒造店を親から跡を継いだ佐藤麻里子さん(1991年生まれ)は県内初の女性杜氏で、弟たちと若い感性で酒造りに取り組んで店の酒のファンが増えたという。
朝食前に湯に浸るのも旅ならではの贅沢だ。ホテルから「越生梅林」まで片道30分の散歩に出る。自転車通学の中高生や梅の剪定作業の男性やゴミの集積場所に向かう女性たちに出会う。ホテルはスポーツ施設を備え、日帰り入浴も営業している。旅の最後の湯に入り11時過ぎにホテル前からバスで駅へ。駅舎の「太田道灌を大河ドラマに!」という署名用紙気づいて記入した。太田道灌の終焉の地の伊勢原市では毎年「太田道灌まつり」が盛大に行われているという。