玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*反知性主義

2024年01月11日 | 捨て猫の独り言

 2016年の6月、イギリスは国民投票において51.9%の賛成でEUからの離脱を決めた。11月にはトランプがアメリカ大統領になった。この注目すべき二つの歴史的出来事を念頭に、その翌年の5月に橋本治の「知性の転覆」が出版されていた。最近この本を手にして、その最終章だけを読んだ。そこにあるトランプ現象についての言及は興味深いものがあった。

  

 いまは下火になったが、その頃にしきりに話題になった「反知性主義」というのはアメリカの学者だか評論家が言い出した「アメリカの心的土壌の分析」で「アメリカには建国以来、知性に対する憎悪や反感がある」としたことが始まりらしい。うかつにも私は我が国の、時の首相を揶揄した言葉かと曲解していたことを思い出す。

 建国当時のアメリカ人は故郷を離れて未開の地にやって来た「移民」なのだ。先住民との争いをくり返して不安になる。「銃規制反対」の裾野を支えるのは「不穏なものがどこに隠れているか分からない。銃がないと危険だ」とする孤立したアメリカ人の原初的な不安感だろう。「知性」というものは様々に存在する複数の問題の整合性を考えて、そこから解決策を導き出そうとするとても面倒な作業だ。

 1950年代の初頭アメリカでは上院議員ジョセフ・マッカーシーの主導で「赤狩り」の暴風が吹き荒れた。ある時パタッと収束する。議会の聴聞会でのマッカーシーの様子がテレビ中継され「品性下劣」である彼の正体が明らかになってしまった結果、アメリカ人はマッカーシーを見捨てたからだ。それから60年以上たった21世紀のアメリカ人の40%以上は大統領が品性下劣であるかどうか問題にしない。没落というのは悲しいことだ。

 

コメント
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