四人が一部屋で寝起きして、6時にセットされたその部屋のシャッターが開く前後には全員が起き出す。たまに姉妹の起きがけの喧嘩が始まり、泣いた妹が拗ねて長椅子に顔を埋めていたりする。順調なすべりだしの朝は三人が縦一列に並んで6時半からのラジオ体操を行う。「ラジオ体操の歌」は覚えてしまったようだ。
姉妹二人だけでラジオに合わせて体操をすることが一回だけあったが、二人の動きが止まることはなかった。体操をした後に食べるパンとヨーグルトはおいしいと私が宣伝したことがある。ある朝体操をせずに朝食をした姉が「体操しなくてもおいしい」とやりかえしてきた。二人だけでテーブルをはさんで英語で話していることがある。自己主張の国の子だからだろうか、そのときの二人のしぐさは日本の子供たちにくらべて大人びて見える。(写真は玉川上水オープンギャラリー近辺で7月4日撮影)
以前から我家には矩形のお盆に、写真立てと灰の入ったガラスコップと線香箱とお茶を入れる小さな器が置かれた簡易の祭壇がある。あり合わせのものの寄せ集めでできている。一つの写真立ての中に亡き三人のスナップ写真が重なるように入っている。体操が終わると私たち三人はその前に座り、手を合わせることが日課の一つとなった。写真がじじばばのパパとママであることを二人は理解している。
この日課のことを「お茶をどうぞ」するという。私が点火した線香の炎を誰が吹き消すかで喧嘩がはじまることがある。「おはようございます。お茶をどうぞ。今日は・・・・・」で始まりその日の予定を報告したり、お天気のことを話したり、姉妹のけなしあいがあったりして短時間で終わる。時おり私が般若心経を読みあげると大いに興味を示す。そして最初の部分を上手に口真似して面白がっている。