畑の耕作面と畔の間に道界杭が立っている。
「ここはおらが畑」「ここまでは道路」との双方の言い分のさかい目である。
畑地と路面には段差があって、畔の構造をこれまでどおりにしておくには、ちょうど歩道の幅ぐらい畑地に食い込む。農家の古老は、飛んでもねえと頑張る。
道路管理者側は、車両交通に支障がなければ、とりあえず道界だけはっきりさせておくより仕方がなかろうといったん目をつぶる。
どうなっているのかなどと、通行人が訊ねる筋合もないから想像でしかないが、まずこういう状況なのだろう。
空地でも、永い間人が通っていると、そこが道になる。道というものはそんなものらしい。
では、道であるはずの土地は、人が通らずに永い間経つとどうなるのだろうか。
境界が先にあって、それを越えて使えば不法占拠だと素人でも思うが、使っていた土地に、後から境界線が敷かれた場合はどうなるのだろうか。
ちょっとした畑と道路の関係でもややこしいのに、津波の災害地では、この先どんな厄介なことが待っているのか。
暮らしのことさえはっきりしてもらえないのに、それにまた環境整備区域とか放射線危険区域とかの難問までかぶせられたのでは、本当にたまったものではないだろうと思う。