エレベーターみんな戸口を向いて立ち
エレベーターを見ると、ときどきこの川柳と作った人の顔を思い出す。
駅や歩道橋にもエレベーターができ、初めて乗った人は出口がどちらかわからないので、思い思いに立つようになった。
駅のエレベーターは、もともとそんなつもりがなかったので場所に苦労する。しかも結構かさばるものを置くので、階段を狭くしてみたり、ホームの通路を狭めたり、いろいろ工夫されている。
駅の階段は、共同住宅の非常階段などと違って、乗降客がなるべく上がり下りに苦にならないように作ってある。
せっかく階段を歩ける機会なので、特別な場合以外は駅ではエレベーターに乗らないことにしている。
エレベーターに向かう人を見ているのも面白い。平均歩行速度より早足になっている人が多い。
立派なスニーカーを履き、ウオーキング・ファッションンに身を整え、ルックザックを背負った、まだ髪の黒い人も急ぎ足でエレベーターに向かう。
ああいう人は、きっと家に歩行器を置いてある。
運動は楽しく、生活は安楽に、というのだろう。
隣の階段を、荷物をぶら下げてちょっと歩くのに不自由そうなおじさんが、ゆっくり登っていく。
世はさまざまである。