悪人にも階級がある。
極め付きの悪人は、誰が見ても、どう見ても悪人にしか見えない。
こういういわゆる極悪人こそが、悪人のなかで最も悪い悪人だろうか、いや、そうではない。
人品骨柄どこから見ても淑女か紳士、善人の鑑のようでいて芯は悪人、個人でもグループでも、それが最悪人。
最悪人は、悪魔までも手なずけようとする。
悪魔はこれ幸いと、互恵の舞扇をひらひらさせながら寄っていく。
そこで、最悪人と悪魔との騙し合い、互恵戦が繰り広げられる。
悪魔の目標はまず世界制覇、これを声高らかにとなえる。
最悪人は目標など示さず、制覇というような目立つことは旗印にもしない。
互恵戦では、一つのものを取り合うような原始的愚行はなされない。
この穏やかそうな波に巻き込まれれば、難行苦行を強いられる。
そう、互恵の裏面は、難行苦行なのだ。