どこにおわすか知らねども 忝(かたじけな)さに涙こぼるる。
西行さん、内宮参拝の折の言葉だそうでございます。
割合長く人間やっておりますと、こうして今を迎えていることの背景となる出来事が色々と思い浮かぶ瞬間(とき)がございます。
なにやら大事を思わざるを得ぬときに、それは多いようでございます。
佳きときも悪しきときも、悩める日も健やかなる日も、ございますが、それらの血肉が今にある儘の、応を、わたくしに思わすのでございます。
何処の何某というのではなく、過去の一体全体の、其処此処で恵んで頂いた出来事の、忝さを思うとき、不思議に今の大事に立ち向かう意志決定の発端が、垣間見えるのでございます。
いかなる世間か知らねども、忝さで花も咲く。