(画/河鍋暁斎)
人殺しをした人々の魂が、毎年きまったある月のある日の夜中に墓の中から呼び出される。
そうして、めいめいの昔の犯罪の現場を見舞わせられる。
行きがけには、だれもかれも
「正当だ。おれのしたことは正当だ」
とつぶやきながら出かけて行く。
・・・しかし、帰りには、みんな
「悪かった。悪かった」
とつぶやきながら、めいめいの墓場に帰っていくそうである。
私は、・・・人殺しだけはしないことにきめようと思う。
-寺田寅彦「渋柿」より-
人殺しをした人々の魂が、毎年きまったある月のある日の夜中に墓の中から呼び出される。
そうして、めいめいの昔の犯罪の現場を見舞わせられる。
行きがけには、だれもかれも
「正当だ。おれのしたことは正当だ」
とつぶやきながら出かけて行く。
・・・しかし、帰りには、みんな
「悪かった。悪かった」
とつぶやきながら、めいめいの墓場に帰っていくそうである。
私は、・・・人殺しだけはしないことにきめようと思う。
-寺田寅彦「渋柿」より-