南無煩悩大菩薩

今日是好日也

逢茶喫茶逢飯喫飯

2018-06-03 | 壹弍の賛詩悟録句樂帳。
(gif/source)

いつぞや、日向地方を行乞した時の出来事である。秋晴の午後、ほろほろ気分になって宿のある方へ歩いていると、ぴこりと前に立ってお辞儀をした男があった。

『あなたは禅宗の坊さんですか。……私の道はどこにありましょうか』

『道は前にあります、まっすぐにお行きなさい』

私は或は路上問答を試みられたのかも知れないが、とにかく彼は私の即答に満足したらしく、彼の前にある道をまっすぐに行った。
 
道は前にある、まっすぐに行こう。

この語句を裏書するだけの力量を私は具有していないけれど、この語句が暗示する意義は今でも間違っていないと信じている。
 
平常心是道、と趙州和尚は提唱した。総持古仏は、逢茶喫茶逢飯喫飯と喝破された。

道は非凡を求むるところになくして、平凡を行ずることにある。漸々修学から一超直入が生れるのである。飛躍の母胎は沈潜である。

-種田山頭火「道〔扉の言葉〕」より

茶に逢えば茶を飲み、飯に逢えば飯を掻き込む。

道は続いている。泳ぐ処に逢えば、泰然と泳ぐのみである。
コメント (2)
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