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私たちは様々な「無知」から智を慮る必要がある。
たとえば、自分では知覚できない無意識の偏見「「アンコンシャス・バイアス」と呼ばれるものがある。
また、我々は環境や心理的な動きに流されて、倫理的に疑問が持たれる行動をとることがある。それが自己の価値観に反する、としてもである。私欲に基づいて非倫理的な行動を取る場合、我々はそれに気づいていないことが多い。これは、「動機付けられた見落とし」(motivated blindness)と呼ばれる現象である。例えば、実際行っている以上に集団作業に貢献していると主張する場合などがそれに当たる。また企業幹部などは自分や組織のためになるなら、自社における深刻な不正行為を無意識のうちに見逃すこともある。
ジョン・ルースが、「無知のベール」(veil of ignorance)と名付けたものがある。たとえば社会はどのように構成されるべきかという問題を、その中における自らの立場(金持ちか貧乏人か、男性か女性か、黒人か白人かなど)を知らずに、すなわち無知のベールに覆われている状態で考えるとしたら、より公平かつ倫理的な意思決定を行うであろう、というものである。実証研究では、無知のベールに覆われて倫理的な意思決定を行う人は、より多くの価値を創造することを示しているという。ある意思決定によって我々がどのような便益を受けるか、あるいは損害を被るかを知らなければ、世の中における我々の立場によって生じるバイアスを受けずに済むのだ。
私を形作っている「偏見」に対する無知を意識化することは私自身の「智」をより信頼できるものへと引き上げてくれるはずだ。
考えや行いにおいてより多くの価値を創造しようとするなら、認知能力の限界を知り向き合い是正する必要がある。