川崎児童殺傷事件の犯人が自害したことに対して、
「死にたければ、他人を巻き込まず一人で死ぬべきだ」
という発言がテレビで流れ、それに対して
「被害者の家族でもない第三者がそれを言うべきではない。
追い詰められている者が『他人を巻き込まず一人で死ね』と聞いても
心に入っていかない。」
と、言葉を選んで言う冷静さを呼びかける意見が上がると、
「きれいごとを言うな」
「家族の前でそれを言えるのか」
などと、ネットで論争が起きている最中、
今度は、元農林水産省官僚が自分の長男を、
「息子も川崎殺傷事件のように人に危害を加えるかも知れない。
周囲に迷惑をかけたくなかった」(警察での供述)
と刺し殺す事件が起きました。
この元事務次官は息子が、
「他人を巻き込まず自分で死ね」と言われる立場にあると考え、
「他人を巻き込む前に、父親の自分が手を下そう」と決めたのでしょう。
そういう意味で、
このお父さんも「他人を巻き込まず自分で死ね」
という人たちと通底する価値観を持っていると思われます。
息子は44歳で仕事をせず、家庭内暴力を振るうこともあったこと、
事件の数時間前に近所の小学校の音を巡ってトラブルになったこと、
ぐらいしか記事に書いていないので
他の事情もいろいろあったのだろうと想像するしかありませんが、
人間を包み、育て、共生する社会の力が痩せ細っているために
こんなことが次々と起きるのではないでしょうか。
困った時はお互い様とか、
長屋のハッつあん、クマさんのお節介とかが、
今ほど叫ばれなければならない時代が
日本社会にかつてあったでしょうか……。
川崎殺傷事件の影響、供述
長男殺害容疑の元農水次官「迷惑かけたくなかった」
毎日新聞2019年6月3日 11時15分(最終更新 6月3日 12時32分)
東京都練馬区の自宅で無職の長男を刺したとして元農林水産事務次官、熊沢英昭容疑者(76)が殺人未遂容疑で逮捕された事件で、熊沢容疑者が川崎市で児童ら20人が殺傷された事件に触れて「長男も人に危害を加えるかもしれない。周囲に迷惑をかけたくなかった」との趣旨の供述をしていることが、捜査関係者への取材で判明した。事件の数時間前には、近所の小学校の音を巡って長男とトラブルになっており、警視庁練馬署は動機を慎重に調べている。
写真は菏澤学院キャンパスの石榴の木