犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

外国人の就活~天ぷら屋

2022-02-07 23:00:54 | フィリピン
 来日したD(娘の夫)にとって、最大の問題は職探しです。

 当たり前のことですが、働かなければ生活できません。

 来日してしばらくは、娘の稼ぎと貯金、Dが持ってきたお金でなんとかしのげますが、それも限りがある。3か月以上無職だと、娘(私の孫)を保育園に預けることもできません。

 それで、来日後、Dの隔離生活が終わってから、さっそく職探しを始めました。

 Dの場合、就活にあたって、いくつかのハンデがあります。

 一つは外国人であること。それも、先進国ではなく、フィリピン。それがどれほどのハンデになるのかならないのかは、就活を始めてみないとわかりません。

 もう一つは日本語力。これが最大の問題でしょう。ひらがな・カタカナはなんとか読めるけど、会話は片言。漢字の読み書きはできません。

 一方、強みとしては…

 英語がネイティブ並みにできること。フィリピンは国語としてのタガログ語と各地の民族語がありますが、高等教育は教科書も授業も英語なので、大学を卒業している人は英語がよくできます。

 ビザ(在留資格)が「配偶者」であることも有利でしょう。在留資格が「就学」の留学生は、週28時間と言うような就労時間の制限がありますが、「配偶者」の場合、それがないので、雇用側は喜ぶようです。

私「ITとか、専門のスキルがあれば別だけど、やっぱり日本語ができないとね」

D「英語の先生は?」

私「それも簡単じゃないと思う」


 日本の小中学校にはALTという英語の補助教員として外国人を雇用します。Dも、フィリピンにいるときに応募しましたが、予想外の理由で不合格になりました(リンク)。

私「ちょっと、知り合いに聞いてみるよ」


 実は、5年以上前に私がミャンマー語を習っていたとき、その息子さんを紹介してもらいました(リンク)。

 お母さんは政府から派遣された留学生で、就学ビザで日本に滞在していましたが、日本が好きな息子さんを「家族呼び寄せビザ」で呼んでいたのです。

 息子さんは来日当時、日本語があまりできませんでしたけれども、外国人OKの飲食店(天ぷら屋さん)で働いていました。日本橋の老舗で、仕出し弁当のおかずを詰める仕事だということで、ミャンマー人がたくさん働いていると聞いていました。

 彼は、お母さんが帰国した後、日本語学校に通って「就学ビザ」で日本に残り、その後大学にも進学しました。最後にあったのは4年ほど前(リンク)。久しぶりに連絡してみました。

「犬鍋さん、ひさしぶりです!」

「今、どうしてるの?」

「はい、ぼくは2年前に大学を卒業して、今は働いています」

「あいかわらず、天ぷら屋さん?」

「いえ、監理団体です」

「ああ、技能実習生の受け入れとかの?」

「はい、そうです。よくご存じですね」


 実は、ミャンマー語のあとに勉強したインドネシア語の先生も、技能実習生の監理団体で働いていたのです。

 そこで、Dの事情について話し、前の天ぷら屋さんで働けないか、聞いてみました。

「ああ、ちょうど先週、天ぷら屋さんの社長から電話があって、だれか知り合いの留学生を紹介してほしいって」

「それはグッドタイミングだ!」


 その天ぷら屋さんは、今ではいろいろはところに支店を出し、私の家から1時間ちょっとのところにあるショッピングモールのフードコートにもあって、そこでアルバイトを募集しているそうなのです。

「ところで、ミャンマー、今大変だね」

 ミャンマーで1年前に軍事クーデターがあって、アウンサンスーチー女史が軟禁された、というようなニュースがありました。

「帰国したりしてるの?」

「ぼくはもう何年も帰っていません。帰ると、出国できなくなるおそれがあるから」

「今はコロナもあるからね」

「お母さんは、2年前、コロナが始まる前に一度来ました。ぼくの大学の卒業式のとき。犬鍋さん、いまどうしてるかな、なんて言っていました」


 話は尽きないのですが、天ぷら屋さんの連絡先を聞き、コロナが収まったらまた会いましょうと約束をして、電話を切りました。

 そして、天ぷら屋さんに連絡し、「外国人でも構わない」ということを確認した後、Dと娘がショッピングモールで女性店長の面接を受けました。

 でも、本店とは違ってフードコートですから、お弁当を詰めるだけの仕事ではなく、調理やその他の仕事も必要だとのこと。

店長「じゃ、ちょっとこれ書いてください」

といって差し出されたのが履歴書。

D「英語でいいですか」

店長「いや、日本語で」


 履歴書不要ということだったのですが、その場で書かせて、それで日本語力を確認しようということのようでした。

娘「書くのはちょっと」

店長「読めるんですか?」


娘「それもちょっと」


店長「…」


 このやり取りの後、店長の口調が急に冷淡になった。

「仕事そのものは日本語不要だけど、仕事の説明は日本語だから…」

 結局、合格の場合は次の週に連絡するといわれて帰ってきましたが、翌週、連絡はありませんでした。

 Dの就活は、初戦敗退でした。

私・娘「まずは、日本語の勉強だね」

D「はい、頑張ります」


 前途多難です。

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