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マダム・コスプレ




娘は5歳で小学校に入学してからずっと制服人生だった。

この9月から6thフォーム(大学入学準備の2年間。高等学校に当たると言っていいか)に進学したので、これ以降の人生で制服を着ることはまずないだろう。


娘は新しい服を買うよりも、母親のクロゼットにあるものを着る方がいいと言い、25年は前のアルマーニのジャケットを買ったばかりのラグ&ボーンのジーンズに合わせたり、母親が履いて幼い自分と写真に収まっているトムフォード時代のグッチのスカートをザラのニットに合わせたりして楽しんでいる。

この前はついにわたしが20歳の時に買ってもらった時計を、自分でオーバーホールに出すから使っていいかと聞いてきた。


わたしは断捨離などしない。
「いいものを買っておくと娘の代まで着れるのだ」と、したり顔をするのみである。


...ここまでが話の長いわたしの今日のイントロダクション。



娘が着られそうなものを整理していて、アーダム(Erdem)のレースのドレスが不織布のカバーの中から出てきた。
レースやシフォン、そして”赤”の服に目がないわたしのコレクション。
娘も目ざとく、頂戴! と言う。

数シーズン前にショーで一目惚れして電光石火でオーダーしたのだったが、直後に英国のファッション・アイコンと呼ばれている女性が、ヴォーグか何かで着てあちこちに写真が載り、気恥ずかしくなって一度も袖を通さなかったのだ。
これは十分寝かせたことだし、自分で着たいなあ!


早速学校のコンサートに着ていったら、香港の女の子たちが娘に、あなたのお母さんのファンだ、いつもどんな服装をしているか楽しみにしていると言ってくれたそうだ。

お世辞でも未来の香港マダムに誉められたらうれしいでしょう! 
(<2つまえの記事にも書いたが、わたしは社交辞令が全くわからない困った人なのです)

学校のイベントに出るときはさすがに服装は控えめにしているのだが、そういうバランスを考えるのもコスプレのようで楽しい。

若作りとは別の次元で美しく、おしゃれで、見るからに成熟していて自信たっぷりの香港マダムにわたしは憧れる...
ああいうのもきっとコスプレの一種なのだろう。香港の女の子はある時点から香港マダムっぽいおしゃれをし始め、香港マダムのように振る舞い、と、それがどんどん板についてくるんでしょうな。


香港からの留学生はどの子も勉強ができ、アイドルのようにかわいらしく、見るからに裕福そうだ。彼女らは特に食べもの、文房具、ファッションは絶対に日本のものがいいと絶賛するらしい。寄宿舎のベッドの下には日本のインスタントラーメンやお菓子のつまった段ボール箱を常備していると娘に聞いた。
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