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長いお別れ

タイトルの「長いお別れ」というのからして、胸の奥がきゅっとするような素敵な清水俊二訳で。
娘が夏休みに読んで、コーヒー・テーブルの下のラックに置いてあったのを、拭き掃除の手を止めてぱらぱらとめくってみたらチャンドラー節から離れられなくなり、「彼らは飲んでばっかりですな」と苦笑しつつ、2日かからず読了。
チャンドラー節は憑依してくるので、例えば昨日、早めに帰宅した夫が、大音響でシェスタコビッチのピアノ協奏曲を聞きながらスーパーの安もののピザにかぶりついているのをマーロウ風に言いまわしたくなる(笑)。
すぐれた文学作品はどれもそうだと思うが、一瞬であの時代のあの場所で生きているかのような気にさせてくれる。
一方で、今のわたしはサンセット・ブルバードがどんな通りで、ギムレットという飲み物がどんな味で、アメリカのレストランの駐車係がどんな雰囲気をまとってるかを経験として知っているが、中学生だったわたしはどんな気持ちで読んだのだろうという記憶にまではどこまでも手が届かなく、ものすごくもどかしい気がした。
中学生だったわたしも、謎を残し「長いお別れ」を中年のわたしに告げたのか。
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