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Brugge Style
1月は銀色の死都ブルージュ
1月いっぱいは残す主義らしい
銀色のロンドンから銀色のブルージュへ。
運河を行く小舟のような湯船につかって『死都ブルージュ』を考えた...
『死都ブルージュ』(原題:Bruges-la-Morte)は、1892年に出版されたベルギーの象徴派作家ジョルジュ・ローデンバックによる小説である。
物語の舞台は、暗く沈んだ19世紀のブルージュ。
ブルージュは13世紀から15世紀にかけて、北海とヨーロッパ内陸を結ぶ貿易拠点であり、羊毛産業と織物交易で栄え、さらに金融センターの機能を持ち、当時ヨーロッパ一豊かな都市としての黄金時代を迎えた。
その後、運河が砂で埋まったことから、ハブはアントワープに移っていく。
つまり、19世紀のブルージュは、15世紀までの栄華と、現在の観光都市としての賑わいのはざまにあり、死んだように停滞した都市だったのである。
『死都ブルージュ』の主人公Hugues Viane(ヒューズ・ヴィヴァンと記すのが慣習)は、最愛の妻の死を受け入れられず、妻の形見や肖像画の面影に囲まれて暮らしている。
街の静謐で澱んだどんづまりの雰囲気が、彼の内面の絶望を反映している。
ある日、ヒューズは亡き妻に似た女性、踊り子のジャンヌ(Jane)と出会い、彼女に妻への思慕を投影しようとするが、ジャンヌは妻とは正反対で、自由奔放、悪く言えばアバズレだった。
彼女に勝手に翻弄され、ヒューズの執着と妄想が彼を蝕み、最終的に悲劇的な結末を迎える。
失われた妻、失われた愛、失われた時、失われた内面、失われた街...死にとりつかれた男は自分自身で死を招いてしまう。
このドロドロした愛憎の物語を、20年くらい前の日本人学校ではテキストブックに使っていたというのだから、天晴れである。
1月はクリスマスと正月で浮かれに浮かれたブルージュが深閑とする季節だ。
銀色の空と、たちのぼる霧、氷のように冷たい石畳...
小説の主人公でなくとも失われてしまったなにかを求めて外に向かうのではなく、内面に深く沈んでしまう。
再生の春はもうすぐそこまで来ているんですがね...そうは思えないのね...
今夜はホテルの部屋の暖炉で暖まろう...
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