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Brugge Style
kissin for alexei navalny
毎年この時期に開催されるEvgeny Kissin のピアノ・リサイタル@ロンドンのバービカン。
プログラム(下に載せました)の演奏も、まるで建築!(「建築は凍れる音楽」byシュレーゲル)で、文句なく素晴らしかったのだが、観客のこころがざわつき、涙したのはなんといってもアンコールだった。
'I dedicate this encore to the memory of Alexei Navalny, who died yesterday in the concentration camp…'
「このアンコールは昨日(16日)、強制収容所で亡くなった、アレクセイ・ナワリヌイに捧げます」
決然とした表情で彼は言った。
一瞬の間の後、会場は再び大喝采に包まれた。
わたしの座席の周りはロシア人でいっぱいだった。
それまで大喝采を送っていたロシア人の中には、アンコールでは立ち上がらない人もいた。
わたしは彼の勇気を称賛する。
彼は音楽界の中にいて、この発言が世間ではいかに危険か見当もつかないのだろう、と言っている人もいたが、わたしは全然違うと思う。
去年のリサイタルでは、「現在の全ての活動をウクライナに捧げる」と旗幟鮮明にし、わたしは彼の演奏をRebel(カミュ『反抗的人間』の反抗)的リサイタルだった、とここに書いた。
カミュの『反抗的人間』は、もちろん反乱と革命を扱ったものであるが、
「極限の状態に置かれ、判断基準に正誤のマニュアルがなときでも、なおそれでも人間は最適解を下すことができるのか」
という最高に厳しい問いをわれわれに投げかけるのである。
今年のアンコールの3曲は、ショパン、プロコフィエフの行進曲、ブラームスのワルツで、肯定的で楽観的で、陽気で、勇敢で、美しく、それらが指の間からこぼれゆく取り返しのつかなさ...
それはナワリヌイのドキュメンタリーでの発言を思い起こさせた。
彼は「もし投獄され 殺されるなら、ロシア国民にどんなメッセージを残すか」と質問されている。
彼はこう答える。
「彼らが私の殺害を決めたということは、私たちの力が巨大だからだ。迫害を受けている私たちこそ巨大な力なのだと覚えておいてほしい。私のメッセージはいたってシンプル。『あきらめないで』なのです」
最後のブラームスの最も美しいワルツで、わたしの涙腺も崩壊...
https://www.youtube.com/watch?v=oy6uV-eMOEs(<昔の録画)
とは言いつつも、彼はイスラエルのガザ攻撃についてはどのように思っているのか、(著名人が発言できない状況下、わたしの知るところではDaniel Barenboimがパレスチナを支持している)ぜひ聞いてみたいとも思った。
ベートヴェンのソナタは、折れるのではないかと思うほど巨大でドライな調べで驚いた。
ショパンのノクターンは1番がわたしが最も好きなノクターンで、2番はメランコリックに優しげ(に演奏されることが多いと感じていた)なため、1番の陰に隠れてしまっていたのだが...それがまあ、蒙を開かれた感じ。威風堂々、直球的に演奏され...感動した。
ファンタジーも同じくすばらしかった。
ブラームスは非常に悲劇的に感じられ、何年か前に出版された彼の自伝では「ブラームスは弾きたいと思わない」という趣旨のことをおっしゃっていたのを思い出した。
プロコフィエフのソナタは、アルゲリッチの演奏が一番だと思っていたものの(今もそう思うけど)、何か全く別物を聞いたような気がした。
まるで生のリズムそのもの。すばらしい、キュビズム(のような)。
このソナタがあまり好きではない夫も、好きになった、と言っていました...
2024年冬に予定されている日本のリサイタルにも行きたいと思っている。追っかけで(笑)
Programme
Ludwig van Beethoven
Piano Sonata No 27 in E minor
1. Mit Lebhaftigkeit und durchaus mit Empfindung und Ausdruck [Vivaciously and with feeling and expression throughout]
2. Nicht zu geschwind und sehr singbar vorzutragen [Not too quickly and very songfully
Frédéric Chopin
Nocturne in F sharp minor, Op 48 No 2
Fantasy in F minor, Op 49
Johannes Brahms
Four Ballades, Op 10 No 1 in D minor
No 2 in D major
No 3 in B minor
No 4 in B major
Sergei Prokofiev
Piano Sonata No 2 in D minor 1. Allegro, ma non troppo
2. Scherzo: Allegro marcato
3. Andante
4. Vivace – Moderato – Vivace
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