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表徴の帝国




「禁域であって、しかも同時にどうでもいい場所、緑に蔽われ、お濠によって防御されていて、文字通り誰からも見られることのない皇帝の住む御所、そのまわりをこの都市の全体がめぐっている。

(中略)


この円の低い頂点、不可視性の可視的な形、これは神聖なる<無>をかくしている。現代の最も強大な二大都市の一つであるこの首都は、城壁と濠水と屋根と樹木との不透明な環の周りに造られているのだが、しかしその中心そのものは、何らかの力を放射するためにそこにあるのではなく、都市のいっさいの動きに空虚な中心点を与えて、動きの循環に永久の迂回を強制するために、そこにあるのである。このようにして、空虚な主体に沿って、「非現実的で」想像的な世界が迂回してはまた方向を変えながら、循環しつつ広がっているのである」

ロラン・バルト著 宗左近訳『表徴の帝国』54頁
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