マンション管理士日記

地域を守る:マンションと地域の融合

ゼロトレランス ①

2006年06月18日 | 子育て

今年の5月に 「生徒指導体制の在り方についての調査研究」 が報告されました。 明確な学校規則、罰則の制定・周知、「ぶれ」 のない指導、小中学校での出席停止、高校での停学・退学の適切な運用…などが提言されています。

そして、6月に文科省から通知がありました。 米国のゼロトレランス方式に取り入れられている方式を参考にして指導方法の確立に努める、事などを都道府県教育委員会に求めています。

ゼロトレランス。 直訳すれば、「寛容(トレランス)が無い(ゼロ)」 という意味です。 米国では1990年代初頭にタコマ市の高校で実施しました。 200件近く発生していた傷害事件が、わずか4件に減ったそうです。 導入したのは、「けんかをした生徒は除籍する」 という方針です。

97年には、当時のクリントン大統領が教育を立て直すために全米にゼロトレランス方式の確立を呼び掛けました。 その結果、よく教え込み、よく訓練するという伝統的な教育観に立ち戻ったのです。 「非管理教育」 を唱えた米国で、それが失敗だったと宣言したわけです。

日本では、「非管理教育」 が主流ですが、この米国のゼロトレランス方式に賛同する声も多いようです。 今回の通知は、その方式を肯定したことになります。

例えば出席停止。 義務教育である公立の小中学校でも、出席停止は適用できるのです。 ただ、適用例が殆どないのが実態です。 今回の報告書を読むと、教育委員会の責任と権限で、出席停止に踏み切っても良い、いや、むしろ踏み切るべきだ、という考えのようです。

ゼロトレランスという語句に惑わされそうですが、多くの課題を含んでいると考えます。 各都道府県の教育委員会と学校現場に判断を任せ切るのは疑問だと感じます。

米国での制度は、問題児童や生徒を放り出すのではなく、立ち直らせる仕組みを持っていました。 各地には 「オルタナティブスクール」 という代替校が設置され、専門家が矯正指導をし、立ち直れば元の学校に返していたそうです。

今の状態では、出席停止にしても家庭に戻るだけです。 それではゲームばかりしてしまうでしょう。 巡回指導をしても、目は行き届きません。

米国では、受け皿(オルタナティブスクール)と責任(担任教師と専門家)を作りあげてから実施していたようです。 詳細な規則と段階的な罰則も公表していたと聞きます。

さらに。 制度(システム)があれば良いか? 否、と思います。 教師の情熱や愛情が絶対に必要です。 寛容を無くす教育に移行するには、教師の育成が不可欠でしょう。