多摩ニュータウンで起きた欠陥問題は、入居者の生活を壊しただけではありませんでした。 共同生活の基本になる、入居者相互の信頼感をも破壊したのです。
補修期間に移転した先での生活が長期化し、家族状況の変化(退職・転勤、子どもの成長、年配者の逝去)などが起きました。 徐々に、価値観が共有出来なくなっていったのです。 何よりも決定的だったのは、居住地域が分かれたことで意志の疎通が図れなくなったことです。
多摩で起きた事象は、公団相手・規模の大きさ・長期化などで耳目を集めました。 しかし、課題点は、多くの分譲マンションが内包する問題でもあるのです。
老朽化したマンションで建替えが議論された場合。 建替えに不参加の居住者も予想されます。
平成14年から施行された 「マンションの建替え円滑化法」 においては、マンション建替組合が時価で売り渡し請求できるとしました。
しかし、例えば高齢者が 「住み慣れた居室に今のままで住みたい」 という要求を出した場合。 どこまで、この円滑化法は強制力を持つのか? 生活権の方が優先されるのではないか?
あるいは、認知症などで物事の判断に不安がある高齢者の場合。 買い取りや立ち退き後の居住の確保などは誰と話しあうのか?
難しい問題です。 マンションにも寿命はあります。 それでも、生活権を廃棄させ退去してもらうだけの根拠を提示することは困難でしょう。
こうした問題を円滑に進めるには、マンションのコミュニティ形成が何よりも重要です。 高齢者価値観や後見人の存在など、日頃からのコミュニケーションが出来ていることかが問われるようになります。
コミュニケーションは、短期間で育まれません。 継続的な親睦や信頼関係作りが大切です。
分譲マンションの資産価値で、管理内容が重視されるようになっている背景と言えます。 ここに、管理組合の占める役割は大きくなります。 そして、管理会社の存在する意味もこの点で問われるのです。