カラダよろこぶろぐ

山の記録と日々の話

イーハトーヴの山歩き 【はじまりは岩手山】

2009-09-26 | ヤマのこと

シルバーウイークは昨年のリベンジ北アルプスへ、とずっと思っていた私だったが、
天候次第でと用意していた「もうひとつの案」に急に心が動かされそっちへ行くことに。

もうひとつの案とは・・・
いつかは歩いてみたかった、いや歩かなければならないと思っていた、
ダンナの故郷、北東北の山。

普段帰省ばかりで時間が取れないので、こんな連休でもなければ歩くチャンスは来ないかも・・・
と実家にはナイショで初めて岩手に行って実家に寄らなかった、
岩手の旅となりました。

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【2009.9.19-9.22 4日間】


 
9/19、朝一番の新幹線で、いつもの見慣れた「盛岡駅」に降り、
そこからは初めて乗る「IRGいわて銀河鉄道」に乗換え「滝沢駅」へ。
この駅で降りた旅行者は私たちだけ。
事前予約しておいた㈲みたけタクシーさん(019-688-1335)が駅前で笑顔で迎えてくれた。

天気予報どおりの良い天気。幸先良い旅のスタート。
タクシーの窓からはくっきりと、いつも遠くから眺めていた【岩手山】がてっぺんまでみえていた。


 
駅から「馬返し」の駐車場まで約15分(¥2800位)、最初から最後までタクシーの運転手さんがいっぱいこの地の説明をしてくれた。
準備体操をしてスタートすると、キャンプ場の先に「鬼又清水」、
がぼがぼと水があふれ出ていた。
登山届けをポストに入れ、さあ、4日間の旅のスタートだ。気合が入る。



【岩手山】にはいろいろなルートがあり、最初は時間的なことも考慮し「網張温泉」からのロープウエイ計画もしていた。
がやはり岩手の山に初めて登るのだから、敬意を祓い王道から行くことにし、馬返しから。
最初は緩やかだったが、すぐに階段が現れ大汗をかく。




富士山と同様「○合目」という表示がある。
まだ0.5合目を過ぎたばかりなのに早速一回目の休憩。
むせるほどの緑緑緑、背の高いブナの森の中に腰を下ろす。
たった10分間だがカラダ中の毛穴が全て開いて、体内の全てを浄化してもらったような気になった。
なんて気持ちがいいんだろう、世界遺産じゃなくたって白神山地と変わらないほど美しい森じゃない。



かいた汗を一旦収め、また登っていく。
この時点ではまだ上を見上げれば【岩手山】がみえていた。
同じ行程で歩く5名くらいの年配のおかあさん達と、リーダーの男性。
地元の方らしい。お互い励ましあいながら登っていく。
でもはるかにおかあさんたちのほうが元気だったな。



3合目を過ぎ、背後に滝沢村が見えてきた。
遠くに見える山は姫神山?  
この下界が見える感じ、去年登った【大山】に似ているな、と思い出した。
あの時も紅葉がきれいだったな。

天気の良い日は「旧道」のほうが景色がいいらしいが、高度恐怖症なので迷わず「新道」を歩く。
合目ごとに「旧道」と「新道」が行き来できるようになっていたから、部分的に行って見てもよかったかもしれないが・・・
そんな余裕はなかったのだ。

歩いてみて実感・・・4合目から8合目までがキツイのだ。
もちろんこのコースは登りっぱなしで標高差約1300mだからきついのは解っていたけれど。
水2l以外に二日分のビール500ml×4本は私の肩にずしり、と堪えた。
軽量化でザックの重さは15kgほどしかない。でも私にとっては元気に歩ける重さの限界だ。



きつい登りに絞られながらも、時々紅く色づいた木々が、私たちを励まし、迎えてくれた。
登るにつれ、町が見えてくる。あっちは盛岡市内だろうか。
下界を見つめるダンナは、ああ、自分は今初めて岩手の山に登っているんだな、
とちょっとしみじみしていたに違いない。(前日睡眠時間二時間で眠かっただけらしいけど・・・)


7合目で見晴らしのよいところに出るが、だいぶガスがかかっていたのと余裕がなかったらしくスルー。
時間も迫っているのでとにかく早く着きたくて・・・がんばって・・・歩いて歩いて・・・
やっと見えた、小屋の屋根。



【15:05】岩手山八合目避難小屋に到着。今夜はここに泊まる。

小屋の管理人さん達(この日は5名ほど駐在)が、
「そんな大きな荷物で登ってきたの!そりゃご苦労さん」と労いの言葉をかけてくれた。
代金をお支払いし、氏名や行程表を記入。
そうか、そっちまで行くんだね。と色々教えてくれる。
山を愛している方達なんだ、ということは一瞬にして伝わってきた。

日没が迫っているので小屋に入り、とりあえず場所だけ確保。
すぐに水とカメラだけを持って、岩手山頂を目指す。



8合目に到着した時から既にガスが上がっていたのでもったいなかったが、
明日の予定を考えると今日中に上っておかないと厳しいスケジュールだった。
明日の朝、もし晴れていればご来光にまた来よう、と山頂を目指す。

小屋から「不動平」まで約10分。そこから山頂の「薬師岳」を目指すが、
富士山の砂走りのような火山灰で滑り、なかなか進まない。
ガスの切れ間から時折荒々しい火口が見え隠れしていた。


【16:16】岩手山頂到着。標高2038m。
いつも盛岡市内から見上げていた山のてっぺんに、いま、いるんだ。



「そらの散乱反射のなかに
古ぼけて黒くゑぐるもの
ひしめく微塵の深みの底に
きたなくしろく澱むもの」----宮沢賢治



稜線に出るとガス女の私と共にガスがどんどん上がってきて、強い風に指先が冷たくなるほど寒くなった。
山頂からはぐるり何も見えない。でももう慣れたかな、展望だけが山じゃない、なんて負け惜しみを言ってみる。

寒いので写真を撮り、今日ここに来れたことに感謝し、祠に手を合わせただけでそそくさと降りる。
登山道の脇にはほぼ等間隔に置かれた石仏が道案内をしてくれていた。
信仰の山だったことが伺い知れる。

さきほどから目に飛び込んでくる、お鉢の中、風になびく赤のいろ。
火山灰の中に根強く咲いた草木が真っ赤に色づいているさまは、
まるで火口からしゅーしゅーと登った火柱から転げ落ちて、単独で静かに燃えている溶岩に見えた。
秋は火山の火口の中にも、きちんと色を添えていた。
岩手山はやっぱり生きている、と感じた。





「不動平」まで戻ると9合目避難小屋がある。
ここもキレイだが基本的に宿泊不可らしい。中には大勢いたので写真は遠慮した。



小屋の前まで戻ってきた。
8合目避難小屋前には「御成清水」という水がじゃばじゃば出ている。
水で苦労することはなさそうだった。
外で夕飯の支度をしようと思ったが、もう17:00過ぎている。風が強くさすがに寒い。
気温は5度くらいだった。
小屋の中でガスを使っても構わない、とのことなので自分の寝床前の廊下で夕飯に。



ここ8合目避難小屋は岩手県山岳会の方達が管理されている。
一人一泊素泊まり¥1700、毛布の貸し出しもあるようだ。
トイレも水洗、しかも掃除が行き届いていて快適そのもの。

外観も立派だが中も素晴らしい。3階建て式になっていて私たちは昇降がめんどうなので1階にしたが、
ちょっと頭をぶつける低さだった。3階のほうがゆっくりできそう。
薪ストーブを一晩中交代でつけてくれているので、全然寒くない。

100名収容の小屋、この日は35人くらいの利用者だったのでゆったりだった。
8割が地元の方だったと思う。聞きなれた岩手なまりの素朴で静かな語り声で解る。
山小屋ではいつも落ち着かず眠れない私だが、
この小屋ではダンナの実家で過ごしているような安らぎの中、
心の底から落ち着くことが出来た。
ここに泊まってよかったな、と思った。

ダンナもそれまでの仕事疲れで、食べ終わるとすぐ19:00には寝てしまった。
私は一人、この温かい雰囲気が心地よくてしばらく飲んでいたが、
消灯前にいつしか眠ってしまったようだった。


2日目へつづく

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【9/19の行程】
東京駅6:04→盛岡9:15 9:46→滝沢駅10:02
馬返し登山口10:40出発→8合目避難小屋15:05到着(休憩含む)
8合目小屋から岩手山頂往復(お鉢廻りナシ)約1時間15分(休憩含む)
標高差約1300m 歩行距離約4.5km