今シーズンは冬用の登山靴を買おうかな、と考えていた昨年末のこと。
ハイカットの靴を買った時、一足目の靴が合わなくて結局買い替え、
と40000円近く捨てるようなコトをした私なので、
冬用の靴も、今履いている同じメーカーを買うつもりでいた。
でも冬山用だと結構お高いので、同じメーカーと言えども合うとは限らないのに、
買いなおしたりでもう失敗したくはないな~、と思っていた。
そんな時、以前から温めていたらしいプランを私に告げたダンナ。
んじゃ、試しに行って見ようか、と連れて行かれたお店がコチラ。
登山靴で知らない人はいないと言われるこの店。
私は知らなかった(汗)スイマセン・・・
初めての店の扉を開けると、見た目にはちょっと難しそうで、
実は優しいオーナーの森本さんが丁寧に応対してくれた。
まずはどんな山に登るのか?装備の総重量など具体的に聞かれる。
合わない靴の悩み、どんな風にあわなかったのか?色々聞いてくれる。
もう一人の若い職人さんもものすごく真剣、正直に色々言ってくれる。
まずは足を入れてみようとサンプルを履いてみたが、見た目と違い不思議ととってもいい感じがしたのだ。
足を入れやすいし、紐を締めたら締めた分だけきっちりと足になじむ感じがした。
これはいいかも・・・と気に入って、オーダーすることに決めた。
オーダーとなったら、まずは足の採寸。
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・・・実は今まで他人に自ら言った事はなかったけど、
私は生まれつき両足の指にハンデを持っている。
普通の人が片足5本の指を使って歩くのに対し、私の場合は5本全部を上手く使えない。
普段町を歩いているだけでもバランスが悪いのか、よくこける、よく転ぶ。
足の指全てに対し均等に力を入れることが多分苦手なのだ。
見た目にも明らかに普通の人とは違うので、見られたくなくてサンダルとか履けない。
素足になる機会があったとき、思春期には他人の視線が自分のその部分に注がれるのが嫌で嫌で、
大学病院に連れてって手術してくれ、とか言って、よく親を困らせたものだった。
今考えればバカげたことを言って悪かったな、と恥ずかしくなるけど。
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店内で足のサイズを測ってもらい、そのサイズのサンプル靴を試着すると、どうも大きくてゆるく感じる。
色々履いてみるもイマイチしっくりせず、森本さんも「おかしいなぁ~」と言う。
そして私の素足をまじまじと・・・足の指のどこにまめができているかを見て、
ハンデをカバーする為に人差し指に力が入り、指を曲げて歩くクセがあることに気づいてくれた。
私は自分の足でありながら、そのバランスで今まで生きてきたから言われるまで気づかなかったが、
言われてみるとなるほどその通りの癖があったのだ。
結局、指を曲げて歩く分、静止している時のサイズより5ミリ~8ミリ小さい靴で十分なのだった。
普通の靴店で測れば5ミリ長い靴を勧められるし、店内で履いた位では自分でも気づかなかったから、
厚みのない足型なのにサイズが合わない靴を履いて、
さらにゆるくて靴の中で足が泳いでしまい、くるぶしに痛みが出てしまうのだ、
と言うことが今頃解った。今更だけど私にとってはすごい嬉しい発見だった。
結局1時間以上店にいて、あれやこれやと採寸し、オーダーにこぎつけた昨年末。
そして・・・世界で一つだけの自分の登山靴。
出来上がるまでの1ヶ月、なんとなくワクワクな気持ちで待った。
そして出来上がりの1月31日、今日再び店へ。
履いた感じを気にして、色々聞いてくる森本さん。
私の足元を見つめる目は真剣そのものだ。
今日帰っても何か気になることがあったら、我慢せずにいつでも言って下さい、と。
前回、オーダーした時にインナーソールも作ってもらい、待っている時間に、
こんな足やあんな足の形やクセのある人がいるんだよ、
北海道から歩いてここまで来て、(何足も履きつぶしているから)
また新しく採寸しなおして、また歩いて北海道まで帰るお客さんがいるんだよ~(すごい!)、
とか色々話してくれた。
今までどれだけの人の足を見つめてきたのだろう?
(S-8深型・重量片足約1050g・オーダー価格¥40000ちょっと)
特に違和感もなかったので、そのままOKで手入れの仕方を教えてもらい店を後にした。
今日は雨じゃなかったので、ワックス塗る前に履いても可、と確認し、
車が少なくなった途中の公園で、真新しい登山靴に履き替えた。
早くその履き心地を試したかったし、早く馴らして山で履きたいから。
今まで履いていた2足目の靴も、足首の紐を全部締めるとくるぶしが痛かったので、
真ん中だけはずしていつも歩いていた。
だからすぐに緩んで、何度も締めなおす作業をしていた。
でも不思議、今日新しく下ろしたばかりの靴。
2時間近く町を歩いてきたけど、確かにまだ硬くてなじまないのにくるぶしの痛みは全くなかった。
家に着いて、儀式の始まり。
防水ワックスを丁寧に塗りこむと、ベージュ色の皮の色が、茶褐色に変わっていった。
これはまだ1回目、2回目は更に濃くなっていった。
オトコノヒト達が、自分の愛するブーツに丁寧に油を塗っては履き、また塗って・・・
そんな自分だけのこだわりの一品を女の私も持てるのかと思うと、ちょっと嬉しい気がした。
goroの登山靴。
見た目はちょっともっさり、けしてオシャレでもない、かっこよくもない。
でもこの世界に一つだけの靴が、私の転びやすい足を守って一緒に歩いてくれるようになるなら、
カッコなんかじゃなくて「真摯な思い」なんだよ、と多分足元を見る度に感じるのではないかと。
手入れの大変なこの靴を、大事に履いていきたいな、と強く思うのでした。