カラダよろこぶろぐ

山の記録と日々の話

爆弾低気圧とくろがね小屋

2013-03-06 | ヤマのこと

2013.3.2(土)~3.3(日)安達太良山目指して友人と一緒に出かけました。

2ヶ月前から予約を入れて楽しみにしていたこの週末。
前日までの天気予報では北日本は荒れ模様だが福島は晴れマークがついていた。

土曜日、新幹線がトンネル抜けるにつれだんだんと雲が多くなっていた。
郡山駅に着いたらどんより空に雪まで降ってきた。雪は降るだろうと思っていたから良いのだけれど、
一番気がかりだった風が・・・まずい感じに。スマホで天気予報をチェックしたら、
「爆弾低気圧・北海道と東北は暴風や猛吹雪に警戒」となっていた・・・



 
あだたら高原スキー場シャトルバスに乗るころには、「ゴンドラは強風のため運休ですので、そのつもりで・・・」
のアナウンス。
安達太良山は去年行って風でゴンドラが止まるようでは山頂は無理と解っていたので、
この時点で目的地を「くろがね小屋」に変更した。
それでもシャトルバスは3台も出るほどの盛況ぶりだった(半分以上はスキー客)

バスを降りたら吹き飛ばされそうな強風に迎えられたが、準備をして出発。



スキー場に立っているだけで転んでしまうほどの突風が吹きつけるのには驚いたが・・・



それでも樹林帯に入れば強風からは逃れることが出来、うっすら日も射していたので、
明日の晴れを信じて登っていく私たち。




今日は前回歩かなかった「勢至平」経由で行きます。



ゴウゴウと唸る風の中、登っていれば寒さなど感じずむしろ暑いくらいだったけど、



坂を登りきって見あげた空には、消えていく太陽・・・



天気が良ければ平坦で広い尾根はスノーハイクには最高なんだろうけれど、
5分と空けず”ドドドドドーーーーッ”と叩きつける風は予想以上で段々笑えない状況になり・・・。



強風に地吹雪も加わり、視界不良に。多分3m先は見えていない。トレースは瞬時に消えていく。
こういう時、道を誤るとかなりまずい・・・のは私でも解る。




ここまでの道のりで既に3組ほど「撤退します」という人たちとすれ違って来ていた。
そしてまたこのタイミングで「引き返します」と2人の男子・・・悩んだ。

地形的に多分今、この辺りだろう、という予想はあったが核心ではない。
私のスマホGPSは寒さのせいか?全然いう事をきかない。
やはり街の物は雪山では使い物にならなかった。
引き返すべきか・・・それとも・・・相談しているうちにほんの少し風が弱まり、
前方が見えた気がしてもう少し進んでみることに。




強風は主に向かい風だったから、息が苦しくて辛かった。前も見えなくてきつかった。
途中3箇所ほどトラバース気味に進むところがあり、強風でバランスを失わないように気をつける。
トレースはなくても足裏の感触でガチガチになっているところがルートだと解るので、進むことが出来た。
最初からアイゼン履いて上がってきて良かった。
そうじゃないと突風に煽られたら踏ん張れなかったように思う。


まだかなまだかな・・・赤テープを頼りに来たけど本当にこの道で合っているのか・・・



不安になった頃、前方に・・・「見えた!小屋だー!」思わず叫んだ。




吹雪の中にぼんやり浮かんだ小屋。こんなにありがたいと感じたことは今まで無かったかもしれない。




くろがね小屋も容赦なく強風に叩きつけられていた。



結局視界不良になった地点から1時間程度で小屋に着いたけど、ずいぶん時間がかかったような気がした。
山頂に立った訳でもないのに、小屋に着いたらなぜか「やったね!」と喜び合う私たちだった。




荒れ狂う吹雪の外から、温かな小屋に迎えられた時は本当に天国に来た気がした。
伊藤さんの笑顔と労いの言葉で、強張っていた身体が解けて、急にお腹がすいてきた。
そういえば何も飲まず食わずでここまで来てしまった。




こうしておしゃべりしている間にも、いくつもキャンセルの電話が入る。
この状況だから仕方ないけどさ・・・と寂しそうな伊藤さん。
山頂から来た人いますか?と聞いたら「なワケないじゃん!こんなのエベレスト級だよ!」皆で笑った。




時計を見るとまだ14時前。
空いているうちに温泉にゆっくり浸かって、と言われ支度をして温泉へ。
もともと良い温泉だけど、辛かった分、しみじみ身体に染み渡る至福の一湯であった。


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ゆっくり30分ほど入っただろうか?夕飯の支度でもしようかと食堂に下りていくとなんだかざわざわ。
どうやら団体さんの中の一人が滑落したと、仲間が小屋に言いに来てパニック状態になってる様子だと。
小屋の主人も伊藤さんも出動して救助にあたり、小屋まで戻ってきたところだった。
(この先の写真は撮りませんでした)


玄関が開き、雪と強風と共に救助に行った彼らが到着し、一瞬凍りつく空気。
小屋にいた我々が息を飲んで見つめていた先に、担架(そり)に乗せられた女性・・・生きてるっぽい。

でも寒さとショックからか横たわったままガタガタと震えていた。そりゃそうだ。
あの強風の中、10分じっとしていたら冷えきってしまうほどの寒さだもの、無事でよかった。
宿泊客皆で手分けしてもうひとつのストーブ点けたり、毛布を2階から降ろしたり、県警に電話したりバタバタ。
幸い外傷は無く、左足首の骨折だけで済んだらしい。
緊迫した空気の中、急遽ヘリで降ろすからとツェルトやらザイルやら準備に更に慌しくなったが、
まさかこの強風では無理・・・と思っていたら、やはりヘリが近づけないとのことで明日まで待機となった。

少人数で運営するような小屋で事故があると本当に大変だ。
それでも悪条件の中、テキパキと対処する小屋番さんの姿には頭が下がる思いだった。
的確に指示を出し、そんなにシビアじゃないと解ったら緊張感を和らげてあげようと
ユーモアも交えて接する伊藤さん。

そんな小屋番さん達の努力のおかげか、骨折した女性も仲間達にも笑顔が戻り、
遅れてしまった夕食の時間には怪我した本人もみんなも笑顔でカレーを食べれたのだった。
よかった・・・本当にホッとした。



 
他の客たちもようやく落ち着いてそれぞれの宴を始めた。
私たちも今回は予約していたコンロセットで鍋を囲んでの自炊。楽しい話に花が咲いた。



 
去年暖かいと感じていた小屋は、荒れ狂う強風で冷やされるせいか今日は寒かった。
だけど温かな山の恵みに何度も浸かり、半数の人がキャンセルになった小屋でゆったり眠った。


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天気回復を願っていたが、残念ながら夜中に吹き荒れてた風は朝になっても止まない。
叩きつける風の間隔は長くなったけど、あと数時間で回復するような感じでもない・・・山頂方面は真っ白。
一応伊藤さんに聞いてみると、「・・・今日はその辺でソリでもしてさ、またおいでよ。楽しいのが一番だから」

はい。心から信頼できる彼の言葉に素直に従います。



小屋では朝から骨折者の搬送準備で忙しく、風が止めば空からだけど、下から救助隊が出発してるから、
とスタンバイ中。我々も気を引き締めてまいりましょう、と下山です。



昨日よりはずいぶん風が静かになった。



それでも滑落しそうなポイントでは細心の注意を払い進む。



緊張する場所をクリアすると、小屋に向かう13名の救助隊とすれ違った。お疲れ様です。



お約束通り下山し始めたら強風もだいぶ収まり、太陽が見え隠れしてきた。
なんだか色んな経験をした2日間だった。





さて・・・樹林帯に入ったらザックをおろし・・・ごそごそ・・・




シャキーン☆



 
登山道ではないところにソリコースを作り、Let'sソリTIME☆
雪と戯れるような天気ではなかったから、ようやくここに来て遊ぶ余裕も出来ました。



散々笑って、さあ帰りましょ。昨日あんなに辛かった風も穏やかになり、下山はあっという間。



スキー場に無事戻ってきました。今日もゴンドラは運休です。


 
スキー場からはタクシーで岳温泉まで戻り、去年と同じ岳の湯でリセット。
同じく「成駒食堂」で昼食。


 
去年食べ切れなかったので、私は”名物・安達太良カレー”
ソースカツ丼はもちろん美味しいけど、カレーも昔ながらの懐かしい味でホント美味しかった。


 
岳温泉から二本松駅への路線バスに乗り、後ろを振りかえると、今頃安達太良の峰々が見えてきた。
友人と一緒に山頂で笑いたかった、ほんとうの空を見せてあげれなかったのだけが心残り。

ずっとこの日を心待ちにしていたけど山頂を目指すことすら出来なかったし、吹雪も辛かった。
だけどもうこんな山行は嫌だ、ここには来たくない、とは全く思わないから不思議。

それはひとえにくろがね小屋の温泉の良さと、郡山の駅から始まり小屋~食堂までで出会った、
実直で心の温かな福島の人々の魅力のおかげだと思っている。



必ずまた来ます。ありがとう。



【行程】往:郡山駅シャトルバス9:00→あだたら高原スキー場10:20
    スキー場11:00→くろがね小屋13:10
    復:くろがね小屋8:10→スキー場10:15(遊び含む)


※昨年の安達太良山レポはこちら

※女性は無事に救助されたようです。