
■メイン写真
鏡峠~佐仲峠間にある覗岩から、三尾山を望む
■今回のコース
佐仲ダム→鏡の滝→鏡峠→覗岩→三尾山分岐→佐仲峠→黒頭峰→夏栗山→佐仲ダム
多紀連山といえば、まず、三岳や小金ヶ岳など多紀アルプスとも言われる山塊を
イメージするが、それより少し西にある、鋸山、三尾山、黒頭峰、夏栗山といった
小ぢんまりした低山群も、多紀連山県立自然公園の一部になっている。
鋸山から三尾山にかけては、4月中旬には岩稜に咲くヒカゲツツジで美しい。
一方で、岩稜に乏しい黒頭峰と夏栗山は、ややマイナーなイメージだが、
佐仲ダムを起点に周回すると、なかなか歩き甲斐のある山行となる。
今回は下見として、三尾山を省いてサクッと歩いてきた。
佐仲ダムの林道脇に駐車し、釣リ管理事務所前のガードレールの手前から
ほぼ消えかけた、かつての遊歩道に入る。
荒れた道に入ってすぐに渡渉し、沢の左岸に転じると、かわいい雰囲気の
不動明王像が出迎える。
その奥には、鏡の滝(5m)が迫る。
ここの右側のグズグズの急斜面を無理やり登ると、明瞭な山道に出る。
滝の上でふたたび沢を渡るが、山道はまたも消え、シカの足跡が続く薄い踏み跡を
たどる。地形図とは右岸・左岸が逆になっている。
最初の沢の二股は右、次は左に鋭角に曲がり、少し上った次の二股(もう水はほぼない)は
右にとる。広い涸れ谷は、落ち葉が堆積して歩きにくい。
登りきったところが鏡峠。
ここで、東西に走る分水嶺の径に合流する。
分水嶺の径を西へ、佐仲峠を目指す。
尾根道に乗ったからといって平坦になるわけではなく、小さなアップダウンが体力を奪う。
そのうち岩峰から展望が開ける。北に見える山は妙高山だろうか。
この稜線、ヒカゲツツジが多い。もちろん、まだ蕾は固い。来月が楽しみだ。
南に黒頭峰も見えた。
幾つか展望がよい場所を通り、ひときわ開けた岩峰に出る。
覗岩からは、三尾山のほぼ垂直岩壁が間近に見える。
回り込むと、ヒトツバが茂る岩に覗岩の標識がある。
三尾山分岐。本番は、ここから三尾山をピストンするが、この日は直接、佐仲峠に向かう。
なかなか強烈な下り坂をこなすと、広い場所に出る。枝越しに夏栗山が見える。
佐仲峠に到着。
佐仲峠に関する説明は、麓の佐仲ダムにあって、「古代、出雲族、楯縫族がこの佐仲峠
(狭仲峠)を越え、河内の郷に入城址、開拓した由緒ある峠である。この峠は、昔は西国
巡礼道」であり、篠山から宮津に通ずる道として、多紀郡から福知山に向かう最短距離
としてこの峠を利用するものかせ多く、峠の入り口には清水のわき出る茶屋、清水茶屋
があり峠の名物としてにぎわった」とある。
出雲族、楯縫族という名を聞くだけで、古代日本史のミステリーへの好奇心で心が躍る。
なお、「春日町」の道標が掲げられているが、実は、峠を越えてくる道は県道289号線
なのである。もちろんクルマは入れない山道である。
峠には地蔵石仏もいらっしゃる。
しばらく平凡な道を行くが、やがて強烈な急坂となり、黒頭峰に到着する。
展望がないのは残念だ。
最後のピーク、夏栗山へ向かう途中、伐採地を回り込む。
そのときに黒頭峰が拝めるのだが、なかなか美しい富士山型をしている。
夏栗山のピークにはTV共同受信アンテナと、金属製の展望台がある。
南側の植林が僅かに伐られ、麓の集落が見える。
展望台から20mほど進むと、観音石仏の祠が、ぽつんとたたずんでいる。
山頂部が不自然に平坦になっており、土塁や曲輪っぽい感じを受けるのと、南北が
切れ落ちているなど、地形をしばらく観察して、ここは山城跡なのではないかと推測。
帰宅後、調べたら果たしてここは明智光秀の丹波攻めの折、砦を築いた場所だと分かった。
なお、黒頭峰と夏栗山は、麓から見た山容から別名「おっぱい山」といい、それぞれ
雄岳と雌岳ともいわれた。
下山ルートは広い幅の道をジグザグに行く。アカガシの巨木が目を引いた。
そのうち強烈な下り坂となり、あまり踏まれていないものだから土が崩れて
よく滑ること滑ること。ずりずりと下っていくと、左に沢と人工の堰が見えてきた。
堰の直下に下り立ち、渡渉して林道に出ると、すぐに朝、車を停めた場所に着いた。
佐仲ダムの周回道路の途中に残る、古い標石。
この隣に佐仲峠の由来を書いた看板がある。