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■メイン写真
中村川にかかる橋から、岩屋本堂を仰ぎみる。飯福田層の基底礫岩が風化してできた。
■今回のコース
飯福田寺→(行場道めぐり)→油こぼし→岩屋本堂→鐘掛→小天井→大天井→亀岩→鞍掛岩→
蟻ノ戸渡り→小尻返し→飛岩→平等岩→元居ヶ原→飯福田寺
今春も定番、伊勢山上へ。
ここは旧伊勢国の「山上=山上ヶ岳」。つまり諸国にあった修験道の「ご当地大峰山」の
ひとつ。スリル感あふれる岩場で知られる、飯福田寺(真言宗醍醐寺派)の行場である。
山伏修行の場合、クライミング装備などは持たないが、我々は安全を期し、ロープ持参、
ヘルメット、ハーネスを装着する。
事故も起きているので、腕に覚えのない人が軽装で入山するようなことは避けたい。
山門前に駐車し、まずは寺務所へ。
「山と溪谷」2024年9月号で、この伊勢山上のガイド記事を書かせていただいた。
そのお礼を申し上げ、入山料500円を支払う。
紀州犬の元狩猟犬、リク君に見送られて出発する。
薬師堂で安全登山を祈願。左の鳥居をくぐり、行場道に入る。
愛染明王、毘沙門天などの小祠を過ぎると、最初の行場、高さ25mほどの油こぼしが現れる。
ロッククライミング未満の難易度ではあるが、万一、落ちたらタダでは済まないので、
時間はかかるものの、一人一人ロープで確保する。
登りきると役行者の像がある。西側は絶景だ。
オーバーハングした行者岩の真下に、岩屋本堂がある。
伊勢山上を象徴する自然の奇景である。
東の覗から、崖下を覗く。ここでも、万一落ちないようにビレイして。
右からボルダリングのように登る、鐘掛の行場を行く。
"縦移動"の油こぼし、"横移動"の鐘掛では、また違ったムーブが求められる。
あまり岩に慣れていないお客様は、さっきから心臓バクバクの連続だ。
鐘掛のテラスを回り込み、一本鎖を頼りに、御笠岩に上がる。前半戦の最難所だ。
スタンスが小さく、かなり垂直に近いので
視覚的にもビビるところだが、皆さん、果敢に突破していく。
抱付岩は、右を巻いていく。
この先、ちょっとした岩場を登ったら、植林の尾根に出て、平凡な登山道になる。
ほどなく小天井のピークに着く。
続いて大天井。今回の最高標高点(約370m)である。
突然、樹林帯が途切れて前方が開けると亀岩だ。南側に絶景が広がる。
ここから後半戦のハイライトとなる。
次の鞍掛岩は、両側が切れ落ちている。
岩は意外に滑りにくいので、慎重にゆっくり行けば大丈夫。
蟻の戸渡りを下っていく。
お次は小尻返し。最初の下りは、ちょっとテクニカル。
足元をしっかり確認して、身体を回しながら下りると安全。
その先は約15mの鎖場を下る。上半身を岩から離し、冷静に足場を見つけていけば
それほど難しくはないが、ここも落ちたら大変なところ。ロープで確保していく。
1人ずつ確保するから、時間がかかるのは仕方ないが、これが遊山トレッキングサービスの
スタイルだ。
岩場はまだ続く。尖った三角形の飛石だ。
この裏側にある平等岩の鎖場は、数メートルの懸垂下降ができるが、時間の関係で巻く。
平等岩の不動明王にご挨拶。いわゆる岩場は、これが最後となる。
役行者像が祀られた元居ヶ原。
どんどん下っていき、白山比咩神社跡から岩屋本堂を遥拝する。
年々、手前の枝が邪魔するようになってきている。
最後は137段の苔むした石段を下る。一段ごとの幅が微妙に狭いので要注意。
無事、寺務所に戻ると、皆さん、緊張から解放されて満面の笑顔。
充実の山行になったと思う。
ところで、油こぼしのところで、取材で来た地元新聞社の記者の方から声をかけられた。
取材、写真撮影の許可を求められ、これをお受けした。
我々の超スローペースにつき合わせてしまって申し訳なかったが、
下山まで、ずっと行動をともにしていただいた。記事は3月中旬ごろに載るそうで楽しみだ。
フルネームを漢字も含めて聞かれたお客様は、きっとコメントが載るのだろう。
帰りに伊勢自動車道の安濃SAで休憩。それぞれ小腹を満たしたりお土産を
買ったりしてアフター登山を楽しんだ。