前日に日本勢が3階級で金メダルを獲得した女子レスリング。現地時間18日に行われた女子63キロ級で川井梨紗子選手が金メダルを獲得しましたが、4大会連続金メダルに挑んだ53キロ級の吉田沙保里選手が決勝戦で敗れ、4連覇の偉業を逃しました。
女子63キロ級の川井は、初戦を5-0で勝利すると、準々決勝はラトビアの選手に8-2で快勝。準決勝のイナ・トラジュコワ(ロシア)戦では、開始1分15秒過ぎに片足タックルで2ポイントを奪うと、1分40秒には両足タックルから相手をマットに叩き付けて4点を追加、さらにローリングで2点を追加。2分過ぎに片足タックル→バックを取って2点を獲得し、わずか2分10秒で10-0の大差でテクニカルフォール勝ち。
決勝戦ではベラルーシのマリア・ママシュクと戦い、第1ピリオド33秒に素早い両足タックルを仕掛けると、バックを取って2点を獲得。さらに連続攻撃を狙ったが、ママシュクが場外回避。2分47秒にママシュクが川井の片足を取ろうとしたが、川井がタックルを切った。
第2ピリオド開始15秒過ぎ、川井が相手を引き落としてバックに回ろうとしたが、ママシュクが素早く回避。残り2分となり、川井が片足タックルを取ると、一気にバックを取って2点追加。残り1分15秒には高速タックルを仕掛けたが、ママシュクが耐え抜く。残り20秒、ママシュクが川井の腕を取って大技を狙うも失敗。逆に川井が相手のバックを取り、ダメ押しの2点追加。試合は6-0で川井が勝利を収めました。
伊調馨に続いての五輪4連覇を狙う53Kg級・吉田は、2回戦のナタリア・シニシン(アゼルバイジャン)に4-0で勝利。準々決勝のイザベル・サンブ(セネガル)戦は、第1ピリオドの開始1分にバックで2点→ローリングで2点を挙げ、第1ピリオドだけで6点を挙げる。第2ピリオドも高速タックルで相手を倒して2点を挙げ、9-0と完勝。
準決勝のベツァベス・アルゲリョ(ベネズエラ)戦は、1-0とリードして迎えた1分55秒に相手の片足を取ると、そのまま場外へ押し込み1点を挙げる。2分30秒にはバックで2点を加え、4-0とリードを拡げる。第2ピリオドもバックで2点を追加し、6-0で勝利。3試合で1点も失わず、貫禄の決勝進出。4連覇まであと1勝。
そして決勝戦、吉田はヘレン・マルーリス(米国)と対戦。第1ピリオド開始から膠着状態が続いたが、1分30秒過ぎに吉田が片足タックルを仕掛けたが、マルーリスがバックを許さず。2分経過したところでマルーリスに「消極性」の注意が与えられ、30秒間の「アクティビティタイム」。この30秒間で両者得点が入らず、吉田に自動的に1点が入る。結局第1ピリオドは、吉田の1点リードで終了。
第2ピリオド、金メダルを確実なものにするためにも大きなポイントがほしいところだったが、23秒にマルーリスに一瞬の隙を突かれ、バックを取られて2点を失う。スコアも1-2と逆転された。挽回したい吉田だか、なかなかタックルが入れず。残り1分になろうとしたところで、場外に押し出されて2点を取られる。これで1-4と3点を追いかける展開に。逆転するには大技をねらうしかない吉田は、残り25秒に高速片足タックルを出すが、バックを取れず。さらに攻め込む吉田だったが、無情のタイムアップ。決勝戦で敗れた吉田、無念の銀メダルです…。
五輪4連覇に挑んだ吉田選手、準決勝まではベテランの持ち味を存分に発揮し、相手に1ポイントも与えず、危なげなく決勝まで進みました。決勝戦も勝てるだろうと思われましたが、まさかの敗戦を喫しました。決勝戦では自分のレスリングをさせてもらえず、逆に2度もバックを取られました。登坂選手や伊調選手は劣勢に立たされても終盤に逆転したけど、吉田選手には挽回する力がなかったのでしょう。試合終了と同時に泣き崩れ、表彰式でも表情は暗いままでした。
試合後のインタビューで、吉田選手は「日本選手団の主将として金メダルを取らなければいけないと思った」とコメント。1992年のバルセロナ大会で柔道の古賀稔彦選手が金メダルを獲得して以降、5大会続けてメダルなし。「日本選手団主将はメダルを取れない」というジンクスまで生まれましたが、吉田選手はそのジンクスを破りました。
世界大会16連覇、個人戦の連勝記録も207まで伸ばしたものの、その2つの記録もストップ。しかし、吉田選手が作り上げた大記録は、この先破られることはないと思います。
女子レスリングは今大会、従来の4階級から6階級に増え、日本は金メダル4個、銀メダル1個を獲得。63キロ級金メダリストの川井選手は、土性沙羅選手と同じく至学館大学に在籍中。吉田選手ばりの高速タックルを武器にポイントを量産。昨年の世界選手権では準優勝でしたが、今回のリオ五輪でシニアの国際大会で初優勝を果たしました。
女子レスリングを長い間牽引してきた吉田選手が銀メダル、吉田選手の後輩である若手の3選手(至学館組)が金メダルを獲得。このリオ五輪で吉田選手の時代に終止符が打たれ、世代交代が来たのかもしれません。