リオデジャネイロ五輪の大会15日目は、日本陸上界にとって歴史的1日となりました。午前は男子50Km競歩で荒井広宙選手が銅メダルを獲得し、夜は男子4×100mリレーで日本が銀メダルを獲得しました!
男子50キロ競歩は、日本からは昨年の世界陸上銅メダリスト・谷井孝行、同4位の荒井広宙、森岡紘一朗の3選手が出場。
レースはヨアン・ディニ(フランス)が序盤から飛び出し、最初の5キロで後続に28秒差、15キロ通過時点で53秒差、20キロ通過時点で1分20秒以上の大差をつける。日本勢3人は、最初は集団の中にいたが、森岡が10キロ通過時点で遅れだすと、22キロ時点で谷井が脱落。半分の25キロ時点で、首位・ディニと2位グループの差が1分40秒に拡大。荒井は4番手で通過。
後半に入ったところで、エバン・ダンフィー(カナダ)が2位集団から抜け出し、荒井は30キロ通過時点で6位。32キロ時点で先頭だったディニがいきなりストップ。2位のダンフィーが追いついたところでレースに復帰したが、37キロ付近でディニがダウン。優勝争いから脱落した。
39キロ、新井を含む2位集団がダンフィーに追いつき、先頭&メダル争い、は荒井、ダンフィー、ジャレド・タレント(豪州)、マテイ・トート(スロバキア)、于偉(中国)の5人に。40キロのところで、タレントが先頭で通過すると、荒井も2番手で通過したが、ダンフィーとトートに追いつかれる。45キロ時点で、首位・タレント、2位・トート、荒井は3位に下がり、4番手のダンフィーに追われる状態。
ゴールまで残り2キロとなり、トートがタレントを抜いてトップに浮上。3位争いでは、荒井がダンフィーに一度はかわされたが、荒井が抜き返そうとしたところでダンフィーと接触。その直後にダンフィーがバランスを崩し、荒井がスパート。
終盤で先頭に立ったトートは、3時間40分58秒のタイムで金メダル。2位争いでは、新井がタレントとの差を縮めるが、タレントが3時間41分16秒で2着にゴールして銀メダル。荒井は3時間41分20秒で3着に入り銅メダル。谷井は3時間51分00秒で14位、森岡は3時間58分59秒で27位に終わりました。
ところが、ゴール後に緊急事態が発生。3着でゴールしたはずの荒井が、ダンフィーの進路を妨害したと判断されて失格処分。この裁定に日本チームが「不可抗力だ」と訴えて異議申し立てを行いました。その数時間後に荒井の失格が覆り、3位が確定しました。
夜に行われた男子4×100mリレー。日本(山県亮太、飯塚翔太、桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥)は前日の予選でジャマイカ・ブラジル・イギリスなどと同じ組に入り、37秒68のアジア新記録で1着。全体でもアメリカに次ぐ2位で決勝に進出しました。
決勝戦では、ジャマイカは第1走者にアサファ・パウエル、第2走者にヨハン・ブレーク、アンカーにはウサイン・ボルトが登場。アメリカもジャスティン・ガトリンが第2走者、タイソン・ゲイが第3走者、トレイボン・ブロメルアンカーに起用。アメリカもメダル態勢だ。カナダは200mで銀メダルのアンドレ・デグラッセを投入。
国の威信をかけた注目の一戦、日本第1走者・山県が好スタートを切ると、パウエルを上回るスピードで第2走者・飯塚にバトンを渡す。少し距離が長かったが、上手く繋いだ。飯塚もガトリンとブレークと渡り合い、第3走者・桐生にパス。桐生は3,4コーナー中間点で先頭に躍り出る!ジャマイカ&米国とほぼ同時にアンカーのケンブリッジにパス。ケンブリッジはボルトと競り合うが、ラスト50mでボルトが一気に抜け出し、ジャマイカが先頭でゴール!ケンブリッジは米国とカナダの追い上げを振り切り、2着フィニッシュ!!日本がこの種目で2度目のメダル、しかも史上最高の銀メダル!
3着争いは米国が3位、カナダが4位に入りましたが、米国が「リレーゾーン」より手前の位置でバトンの受け渡しを行ったとして失格となり、カナダが銅メダル、5位入線の中国が4位に繰り上がり。また、トリニダードトバゴも失格となりました。
男子50キロ競歩は、荒井選手3着ゴール→進路妨害で失格→日本側抗議→結局失格なし&銅メダル確定と二転三転しましたが、競歩で五輪史上初のメダリストが誕生しました。メダル確定時は「お騒がせしました」と話し、レース後にはダンフィー選手が荒井選手のところに寄ってきて、自ら謝罪&抱擁したそうです。ダンフィー選手も潔くていいですね。
荒井選手は昨年の世界選手権で4位入賞、それから1年後の五輪で銅メダル。ここまで来たら、来年以降の国際大会でさらに上の順位を目指してほしいですね。
男子4×100mリレーは、ジャマイカ、米国に次ぐ3番手争いになるかと思われたけど、米国に先着して銀メダル獲得。桐生選手が凄い加速力でジャマイカに先行したときは「もしかしたら」と思っていました。ケンブリッジ選手もボルト選手に必死に食らいつき、最後まで2着を死守しました。8年前の北京での銅メダルも凄かったけど、それを遥かに上回る興奮と感動でした。走破タイム37秒60は、予選で出したアジア記録をさらに更新しました。9秒台が1人もいない日本が、銀メダルを手にしたのは奇跡だと思います。
銀メダルの要因となったのは、日本が長年使用している「アンダーハンドパス」。今回はお互いの腕を伸ばし合って距離を稼ぐという「改良型アンダーハンドパス」を採用。失敗する可能性も高かったけど、予選から中国の持つアジア記録を破り、決勝でも強豪国と互角の勝負を演じました。ボルト選手も「日本のバトンパスは素晴らしい」と大絶賛。まさに日本の技術力の勝利といえます。日本が「アンダーハンドパス」でメダルを取ったことで、他の国が「日本流アンダー」を取り入れる国が増えるかもしれない…。
ここまで日本陸上チームは、女子マラソンで誰も入賞できず、トラック個人種目も惨敗続きでしたが、競歩とリレーでメダル獲得。このあとは、日本時間21日午前に男子やり投げの決勝に新井涼平選手が出場し、21日夜には男子マラソンがあります。男子も女子同様に入賞は難しいですが、完走目指して頑張ってほしいです。
大詰めとなったリオ五輪、大会15日目は陸上の他にも、シンクロナイズドスイミングで日本チームが銅メダル、レスリングの男子フリースタイル57Kg級で樋口黎選手が銀メダルを獲得しました。
これで日本は金メダル12個、銀メダル8個、銅メダル21個、総計41個を獲得。前回のロンドン五輪の38個を上回る、史上最多記録を更新しました。メダリストがさらに増えるのか、それとも打ち止めになるか?リオ五輪もあと少しで閉会式。なんか寂しくなるな…。