今日は、朝刊の1面にも掲載された消費増税再延期方針の話でも取り上げるべきなのかもしれません。しかし、これは内閣総理大臣の方針ということであって、まだ内閣内で統一が取れている訳でもなく、正式な発表でもないので、別の機会に扱おうと考えています。
そこで何となく朝日新聞デジタルを見ていたら、北海道版として「札幌ー稚内、特急の区間短縮へ 意見交換会」(http://digital.asahi.com/articles/CMTW1605270100005.html)という、今日の9時23分付の記事を見つけましたので、これを取り上げます。
JR北海道といえば、今年3月のダイヤ改正でかなり大きな減量ダイヤ改正を行いました。札沼線の浦臼から新十津川までの区間が一日3往復から1往復に減らされましたし、石北本線の上白滝駅や旧白滝駅など、いくつかの駅も廃止されています。今年中に留萌本線の留萌から増毛までの区間が廃止されることも決まりました。北海道新幹線が開業したとは言え、青函トンネルで最高速度が制限されるために東京から新函館北斗まで4時間を切ることができず、期待されたほどの効果は出ていないようです(むしろ、不安が的中したという表現が相応しいかもしれません)。
同社の在来線に目を転ずると、黒字路線が一つもないようです。いわゆる三島会社の一つであるJR九州も、鉄道事業は赤字ですが、篠栗線だけは黒字です。JR北海道の場合、札幌近郊の路線でも赤字です。やはり、人口、過疎化の進展、過酷な自然など、いくつかの大きな原因がある訳で、JR北海道の自助努力だけではどうにもならない部分があるでしょう(いや、その部分のほうが大きいでしょう。軽々しく自助努力という言葉を振り回すのが日本の特徴です。まずは政治家が公金にたかることなく、自助努力で、自らの資金だけで政治活動を行い、手本を見せてほしいものです)。今回のダイヤ改正も、国鉄時代から運用されている車両の老朽化と、これらを置き換えるための費用との兼ね合いなどで、営業運転の本数を減らさざるをえないという事情があります。それだけでなく、赤字路線は一つでも減らしたいというところでしょう。ただ、輸送密度が低い路線が多いだけに、一定の基準を設けて廃止に踏み切れば、残る路線はごく僅かということになりかねません。
記事に取り上げられていたのは、まず宗谷本線です。昨日(5月26日)、名寄市でJR北海道と沿線11市町村長との意見交換会が行われました。この席上でJR北海道側が宗谷本線の特急について運転区間の短縮を打ち出したのです。勿論、JR北海道の内部ではそれなりの期間をかけて検討を続けてきたことでしょう。
JRグループは毎年ダイヤ改正を行っていますが、特急の運転区間短縮は来年(2017年)のダイヤ改正ということになるようです。現在は札幌から稚内まで、「サロベツ」が1往復、「スーパー宗谷」が2往復となっていますが、これらのうち、2往復を旭川から稚内までの区間に縮めるというのです。理由は、やはり車両の老朽化と、置き換えのための車両を導入する資金の不足があげられています。
宗谷本線と名乗っていますが、同線は幹線でなく地方交通線と位置づけられています。現在は支線もなく、距離の面では本線という表現が相応しいかもしれませんが、輸送密度の面では本線とは名ばかりのローカル線で、とくに名寄から稚内までの2015年度の輸送密度は403人と、北海道内で6番目に低い数値となっています。この区間の途中にある音威子府駅は、特急停車駅としては最も人口の少ない村にあることが知られていますし、21世紀に入ってから下中川、上雄信内、南下沼および芦川の各駅が廃止されています。他の駅も似たような状況でしょう。
当然、地元の自治体では反発もあることでしょう。上記記事では「宗谷線を残していく覚悟はあるのか」という声もあったようです。しかし、JR北海道としては、むしろ「廃止の覚悟があるのか」というところでしょう。地元のメンツで存続というのが、JR北海道などにとって最も迷惑な話です。また、「宗谷線がどうなるのか、地域に不安感がある」という趣旨の発言もあったようですが、各駅の利用状況を考慮に入れると、少なくとも通勤世代にとっては「あってもなくてもどうでもいい」という意見が強いかもしれません。最も懸念するのは通学客でしょう(日立電鉄の鉄道路線の存続を訴えて立ち上がったのが高校生だったという事実は象徴的です)。
他にも、一部区間が長らく運休している日高本線も、記事に取り上げられていました。沿線の新冠町でも昨日協議会が行われたようで、こちらは第3回であったとのことです。この路線も輸送密度が低く、まさしく本線とは名ばかりのローカル線ですが、おそらくJR北海道は廃止という選択肢を念頭に置いているのでしょう。記事によれば、地元では「新駅の設置や札幌への直通列車の運行」が要望されていたようで、JR北海道がこれらについて収支想定を提示したそうです。仮に「新車両の製造費などの初期投資費用を除いても年間3億円近い赤字が出る」というのが想定の結果でした。これに対し、地元から「『試算は、非現実的。試算の再考を』などの意見が出て、JRも再検討することにした」というのですが、「非現実的」とはどういう意味なのでしょうか。この試算では赤字の額が控え目だから再検討ということであれば理解できます。赤字額が大きいから再検討ということであれば、甘いと言わざるをえません。
また、上記記事では札沼線にも言及されていますが、石勝線の夕張支線の存廃問題が議論されたという話も取り上げられています。結論が出たのかどうかわかりませんが、このままでは、よほどのことがなければ廃止でしょう。
JR北海道は、4月に地域交通改革部という組織を新設しました。今後、事業の縮小、路線の廃止を進めるということでしょうか。何しろ、2015年度の営業赤字は352億円、2016年度には400億円に達するという見通しも立っています。頼みの北海道新幹線も赤字となると、在来線の縮小に拍車がかかるということになるでしょうか。少なくとも、既存の駅の廃止が進められていくでしょう。
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