現在、第211回国会(常会)が開かれています。
今回も多くの法律案が提出されていますが、衆議院議員提出法律案の中で、現段階で唯一、衆議院で可決され(しかも全会一致です)、参議院で審議中の法律案があります。衆議院議員提出法律案第6号(提出者は議院運営委員長)の「議院法制局法の一部を改正する法律案」です。
そもそも、議院法制局法(昭和23年7月5日法律第92号)とはいかなる法律であるのか。まずは示しておかなければならないでしょう。
第1条第1項:「各議院の法制局に左の職員を置く。
一 法制局長
二 参事
三 前各号に掲げる職員以外の職員」
第1条第2項:「各法制局の職員の定員は、その院の議決によつてこれを定める。」
第2条:「法制局長は、議長の監督の下に、局中一切の事務を統理し、所属職員を監督する。」
第3条第1項:「各法制局に、その事務を分掌するため、部及び課を置く。」
第3条第2項:「各部課の分掌事務及び各部の分課並びに職員の配置は、法制局長が、これを定める。」
第4条第1項:「各法制局に法制次長一人を置き、法制局長が、議長の同意を得て参事の中からこれを命ずる。」
第4条第2項:「法制次長は、法制局長を助け、局務を整理し、各部課の事務を監督する。」
第4条第3項:「法制局長に事故があるとき又は法制局長が欠けたときは、法制次長が、法制局長の職務を行う。」
第4条の2第1項:「各法制局に法制主幹を置き、法制局長が、議長の同意を得て参事の中からこれを命ずる。」
第4条の2第2項:「法制主幹は、法制局長の命を受け重要な法律問題に関する事務を掌理する。」
第5条第1項:「各部に部長を置き、法制局長が、議長の同意を得て参事の中からこれを命ずる。」
第5条第2項:「部長は、法制局長の命を受けその部務を掌理する。」
第5条の2第1項:「部には、必要がある場合においては、副部長を置くことができる。」
第5条の2第2項:「副部長は、法制局長が議長の同意を得て参事の中からこれを命ずる。」
第5条の2第3項:「副部長は、部長を助け部務を整理する。」
第6条第1項:「各課に課長を置き、法制局長が、参事の中からこれを命ずる。」
第6条第2項:「課長は、上司の命を受け課務を掌理する。」
第7条第1項:「参事は、上司の指揮監督を受け事務を掌る。」
第7条第2項:「第一条第一項第三号に掲げる職員は、上司の指揮監督を受け職務に従事する。」
第8条:「法制局長及びその指定する参事は、委員会又は合同審査会の求めに応じ、法制局の所掌事務に関し、報告説明することができる。」
第9条第1項:「衆議院法制局に置かれる部は、第一部、第二部、第三部、第四部及び第五部並びに法制企画調整部とする。」
第9条第2項:「委員会の命を受けて行うその審査又は調査のために必要な法制に関する調査(次条において「法制に関する予備的調査」という。)及び行政監視に係る法制に関する事務に係る企画調整の事務並びに決算行政監視委員会の所管に属する法制に関する事務は、法制企画調整部においてつかさどる。」
第10条:「衆議院法制局長は、委員会から法制に関する予備的調査を命ぜられたときは、当該法制に関する予備的調査に関して、官公署に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。」
今回の改正案は衆議院のサイトに掲載されています。短いもので、次のとおりです。
「議院法制局法(昭和二十三年法律第九十二号)の一部を次のように改正する。
第九条第一項中「法制企画調整部」の下に「及び法案審査部」を加える。
附 則
この法律は、令和五年四月一日から施行する。」
法律案には提出理由が示されます。今回の改正案も然りで、次のとおりです。
「衆議院法制局に置かれる部として法案審査部を規定する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」
また、「議院法制局法の一部を改正する法律案要綱」には、「一 衆議院法制局に置かれる部として法案審査部を規定すること。(第九条第一項関係)」および「二 この法律は、令和五年四月一日から施行すること。(附則関係)」と記されています。
法律案はもとより、提案理由にも要綱にも詳しいことが書かれていませんし、衆議院では審査省略、つまり、衆議院内のどの委員会にも付託されておらず、本会議で審議されたということですがインターネットで3月16日の本会議の議事録を参照することはできませんから、詳しいことはよくわかりません。「法案審査部」が衆議院議員提出法律案の審査を行う(勿論、議案として提出される前に)ということであろうと考えられるのですが、参議院での審査・審議を参照することができる機会を待たなければならないかもしれません。
いずれにしても、地方自治総合研究所の地方自治関連立法動向研究の一員であり、そのためもあって何かあれば永田町の国立国会図書館へ行く私にとっては、かなり気になる法律案です。
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日本の法律にも様々なものがあります。最も条文数が多い地方税法のようなものもあれば、僅か1条しかないものもあります。所得税法などの国税関係や地方税法、地方交付税法などのように毎年改正されるものもあれば、それほど頻繁に改正されないものもあります。
議院法制局法は、昭和23年、つまり1948年に制定された法律ですが、改正が少ないものと言えるでしょう。私がよく利用する日本法令索引というサイトで検索してみると、「議院法制局法等の一部を改正する法律」(昭和33年4月1日法律第43号)、「議院法制局法の一部を改正する法律」(昭和52年4月18日法律第17号)が見つかります。ということは、この2回しかないということです。今の国会で改正案が成立・施行されるとするならば(時間は切迫していますが)、1977年以来、およそ46年ぶりの改正ということになります。
ちなみに、制定以来、改正されたことのない法律も、非常に数は少なくなりますが存在します。その代表例が、小型の六法にも必ず掲載されている失火ノ責任二関スル法律(明治32年3月8日法律第40号)です。「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」という一か条しかない短い法律です。
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