ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

撤去作業が進む東急東横線渋谷⇔代官山の高架橋(並木橋駅跡も含む)

2013年11月12日 08時34分44秒 | まち歩き

 (私のサイトにある「ひろば」の第545回として、2013年11月4日から12日まで掲載したものです。一部、文章を修正しました。なお、写真撮影日は2013年10月25日です。)

 2013年3月16日(土)、東急東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転が開始されました。これは、東武東上線、西武有楽町線・池袋線との相互直通運転が開始したということをも意味します。首都圏の交通網に大きな変化をもたらした出来事ですし、様々な問題を抱えていると言えるものの、利便性の向上は明らかでしょう。元々、東急東横線は首都圏でも非常に便利な路線の一つですので、さらに強力な路線となったことは言うまでもありません。

 その一方で、1964年から50年近くにわたって続けられてきた東京メトロ日比谷線との相互直通運転が3月15日を最後に終了し、1000系も運用を離脱しました。また、東横線を走っていた9000系が、この日を最後に同線を離れました(現在は大井町線で活躍しています)。

 そして、何よりも大きな変化は、渋谷駅です。明治通りの地下にあるホームには、既に東京メトロ副都心線が乗り入れていましたが、このホームに東横線が乗り入れることとなりましたので、開業以来の高架駅も3月15日が最終日となってしまいました。私も、幼少時から東横線の高架駅になじんでいましたので、残念な気もしました。

 3月16日から渋谷駅が地下化していますから、当然、渋谷駅と代官山駅の間も地下化されていますし、高架区間は使用されていません。果たしてどうなっているか、気になっていましたので、10月25日、国学院大学での講義が終わってから並木橋の交差点まで歩いてみました。

 東横線の線路は、並木橋交差点の付近から大きく右に曲がり、山手線を越えて代官山駅に向かっていました。カーブがきついこともあってか、この辺りでは最高速度が40km/hほどに制限されていました。

 使用されなくなってから7ヶ月ほどが経過しています。東横線の高架橋撤去作業は進んでおり、道路を越える部分では橋が消滅しています。上の写真の手前が並木橋交差点で、奥が代官山町のほうです。急カーブの部分では橋と架線柱が残されています。この区間を、レールのきしむ音を出しながら電車がゆっくりと走っていたことを、すぐに思い出しました。

 並木橋は、渋谷川にかかる橋の名前です。場外馬券売場が交差点の近くにあることでも有名ですが、実は、かつてこの界隈に多くの学校があり、現在は目黒区にあるトキワ松学園や、やはり現在は世田谷区にある東京農業大学も、戦前にはこの辺りにありました。現在も国学院大学、実践女子学園、青山学院があります。

何年後になるかわかりませんが、この東横線の高架橋も完全に姿を消します。よく目に焼き付けておきたい、消滅する前に姿を証拠として残しておきたい、と思い、撮影しました。

 並木橋から、先程とは逆の渋谷駅方向を撮影してみました。何の意味がある写真かとお思いの方もおられるでしょう。実は、非常に貴重な痕跡が消滅する可能性が高いので、撮影しておいたのです。

 東横線にも廃止された駅がいくつかあります。そのうちの一つが、渋谷駅と代官山駅との間にありました。並木橋という駅で、その所在地を撮影したのが上の写真です。渋谷駅から500メートルか600メートルくらいしか離れていないのですが、先程記したように周辺に学校が多かったため、利用客も多かったそうです。

 並木橋駅が開業したのは、東横線の渋谷~多摩川の開業と同じ1927年8月28日です。当初から高架駅で、開業当初は構内踏切もあったそうです。しかし、第二次世界大戦の末期、1945年5月の空襲で大きな被害を受け、同年6月1日に休止となりました。結局、1946年5月31日に廃止されてしまいましたが、その理由は、空襲による被害の他に、渋谷駅から近すぎたという事情があるのかもしれません。戦時中には全国で駅の統廃合が積極的に行われていたからです。もっとも、東急線には駅間距離が短いという区間が少なくないので、正確なところは不明としておきましょう。なお、廃止後もしばらくの間、ホームの基礎部分が残されていましたし、よく見れば駅の痕跡があることは電車の中からでもわかりました。

 この他の廃止駅については、後に「付記」としてあげておきましょう。

 並木橋駅の痕跡が僅かに残る高架橋でも、解体作業が進んでいます。架線柱も外されていました。1980年代には簡易旅館もあったような場所ですが(電車からも見えました。今もあるのでしょうか)、おそらくは埼京線・湘南新宿ラインの渋谷駅が開業した影響で、大きく変化しました。

 つい7ヶ月ほど前まで線路が敷かれ、電車が行き交っていた高架橋の上には、工事用の車が置かれています。並木橋駅の痕跡も完全に消滅し、高架橋が姿を消すのも、そう先のことではありません。時が流れれば、街の姿も変わります。

 仕事の関係で、講義期間であれば毎週(2013年度は金曜日)、渋谷駅周辺を歩きます。しばらく、この解体作業の経過を見ようかと思っています。

 〔付記〕

 東横線で並木橋駅以外に廃止された駅をあげておきましょう。

 まず、川崎市中原区です。現在は全国的にも注目を浴びている武蔵小杉駅ですが、実はこの駅は2代目で、開業は戦後の1953年4月1日で、古い駅が多い東横線の中では最も新しい駅であるとも言えます。つまり、東横線の多摩川~神奈川(廃止)が開業した1926年2月14日からしばらくの間、新丸子駅と元住吉駅との間には一つも駅がなかったのです。

 1927年、現在の南武線の前身である南武鉄道(後に鉄道路線が国に買収され、現在は太平洋不動産)の川崎~登戸が開業しましたが、東横線と南武線との乗り換え駅はなく、不便でした。また、南武線には武蔵小杉という駅もありましたが、現在とは違い、国道409号線と交差する地点(小杉御殿町交差点のそば。中原区役所の近く)にありました。こちらは1944年に廃止されています。現在の武蔵小杉駅は、元々グラウンド前という名称であり、1944年に改称されています。

 こうなると、南武線との乗換駅がないという状況では不便です。この辺りには軍需工場が多かったために、接続は必須でした。そこで、1945年6月16日、東横線に初代の武蔵小杉駅が開業します。当初は定期券利用客のみが乗降できたようで、朝夕の通勤時のみの営業だったそうですが、1947年元旦から一般の駅となりました。

 しかし、初代武蔵小杉駅には問題がありました。南武線の線路の上にホームができたとは言え、新丸子駅に近すぎ、また、隣にあった工業都市駅にも近すぎたのです。そこで、1953年4月1日、初代武蔵小杉駅と工業都市駅が統合されて、2代目となる現在の武蔵小杉駅が営業を始めたのです。

 工業都市という見慣れない名称が登場しました。この駅は、現在の武蔵小杉駅から元住吉駅側、国道409号線を越えて目黒線の線路が地上へ下り始める場所にありました。開業は1939年12月11日です。

 次に、横浜市内へ移りましょう。最初は、東白楽駅と反町駅との間にあった新太田町駅です。1926年2月14日に開業し、1945年6月1日に休止、1946年5月31日に廃止されました。休止の理由は並木橋駅と同様です。しかし、1949年3月15日、近くで日本貿易博覧会が開催されたため、廃止されたはずの新太田町駅は「博覧会場前」として再度営業を始めました。これは復活という訳ではなく、期間限定の仮駅としての営業で、同年6月15日に廃止されました。現在は記念碑が建てられているとのことです。

 反町駅と横浜駅との間にも、廃止された駅がありました。神奈川駅です。1926年2月14日、多摩川から開業した東横線の、当初の終着駅で、東横線の東白楽~横浜の地上時代にあった高島山トンネルを出てすぐの場所にあったようです。当時は東海道本線にも神奈川駅がありましたし、現在も京浜急行の神奈川駅がありますので、連絡が行われていたようです。ところが、東海道本線の神奈川駅が廃止され、3代目(当代)横浜駅が開業したことから、東横線の神奈川駅が1928年10月15日に移転開業します。やはり空襲にあい、1946年7月25日に休止となり、1950年4月7日に廃止されました。

 そして、2004年1月30日に廃止された横浜~桜木町です。この日に高島町駅と桜木町駅が廃止されたのですが、実はもう一つ、廃止された駅がありました。本横浜駅です。1928年5月18日、東横線が神奈川駅から延長された際の終点で、当初は高島という名称でした。同年8月3日に本横浜と改められましたが、1931年1月20日に廃止されています。これは、関東大震災後の区画整理事業の完成を待っていたこと、東横線の前身である東京横浜電鉄が桜木町方面への延長を鉄道省と協議していたことによるもので、1931年1月20日、高島町駅が開業します。桜木町駅の開業は1932年3月31日で、これによって東横線の全区間が開業したことになります。高島町駅と桜木町駅が廃止されたのは、2004年2月1日に開始された横浜高速鉄道みなとみらい線との相互直通運転のためです。


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