〔今回は、2012年11月26日付で、私のホームページの「待合室」に第502回として(12月3日まで)掲載したものを再掲載します。但し、文章の一部を変更しています。また、以前このブログに掲載した記事と重複する部分もあります。〕
近鉄四日市駅11時30分発の3両編成の電車で、終点の内部に向かいました。線路の幅が狭い、いわゆる軽便鉄道の部類に入る路線のため、モ262はつりかけ駆動のモーター音を高らかに鳴らして走ります。今や大手私鉄でつりかけ駆動の電車が走っているのは、ここ内部線・八王子線のみとなりました。これは、車両のサイズの関係で技術的にカルダン駆動の採用が難しかったという理由によります。同じく軽便鉄道で、かつては近鉄が運営していた三岐鉄道北勢線の電車も、つりかけ駆動を採用しています。
もっとも、三重交通時代に垂直カルダン駆動の4400系が登場していますし、越後交通栃尾線にも同じく垂直カルダン駆動の電車が登場していますが、構造が複雑で扱いにくい、などの理由により、垂直カルダン駆動は普及せず、廃れてしまいました。栃尾線は1970年代に全廃されていますので車両はありませんし、三重交通4400系は動力を外されてしまい、200系となりました。現在は三岐鉄道北勢線でクモハ277に牽引される形で運用されています。
内部線、八王子線とも、四日市市内のみを走ります。近鉄四日市を発車して、住宅地の中を走ります。気になったのは、築年数がかなり経過した民家が多かったことです。鉄筋か鉄骨の建物も見えますが、木造2階建ての民家が多く、どう見ても昭和30年代か40年代からの建物が目立ちます。南日永から農地や藪が多くなります。交換駅の泊の辺りは、私が住んでいる高津区の久地あたりに似ていましたが、現在の久地というより1980年代の高津区の住宅地に似ているような気がします。眺めているうちに気分だけがタイムスリップしたかのような錯覚を覚えました。追分から田畑も多くなり、終点の内部に到着しました。
私が乗っていたモ262は近鉄四日市側の車両ですので、その反対側の先頭車であるク162を撮影してみました。一枚窓で、視界を広く取っています。窮屈そうな乗務員室ですが、中に入る訳にはいきません。鉄道営業法第33条第3号で禁止されているためで、この規定に違反する行為については刑事罰に処せられることとなります。
終点の内部駅は有人駅です。つまり、駅員が配置されています。前回も記しましたが、近鉄内部線・八王子線での有人駅はここと近鉄四日市駅のみです。どこかの民家を二つくらいつなげたかのような構造で、私が小学生の頃に高津区内の某所にあった学習塾を思い出しました。
内部駅には自動券売機が一台だけありますが、自動改札機はありません。軽便鉄道(ナローゲージ)の近鉄線の駅で自動改札機を設置しているのは近鉄四日市駅だけのようです。ちなみに、かつて近鉄の路線であった三岐鉄道北勢線では、西桑名と阿下喜に自動改札機があることを確認しています。
大手私鉄で無人駅と言えば、何と言っても名鉄で、その多さには驚かされますし、名古屋本線の豊明駅は最大規模の無人駅であることでも有名です。その次に多いのはどこかというのはわからないのですが、近鉄で無人駅が増えていることが報じられています。
以前、西鉄宮地岳線に乗って終点の津屋崎駅で降り、周辺を歩いた時のことを思い出しました。津屋崎で見たのはスローガンのみが書かれた紙でしたが、こちらでは写真がベースとなっています。今年になってからこのように掲げられているのでしょうか。地元での運動の様子が気になるところです。
四日市市は、内部線・八王子線のBRT化に反対しています。実際に見ると、軽便鉄道の単線をそのままバスの専用道路とするのは無理でしょう。本数も限定されますし、何よりも電車と同じで交換(離合)しなければならず、所要時間が長くなる可能性があります。輸送量も、いかに軽便鉄道の小型電車とはいえ、3両も連結していれば、バスより大きいでしょう。これまで、BRTなどと言わないバス専用道路の路線があり、その中には国鉄バスが運行されていた路線もあるのですが、路線そのものが廃止されるか、専用道路が縮小されるか、そのいずれかとなっています。
内部の駅前の道路に出ました。バス通りですが、幹線ではないらしく、自動車の通行量もそれほど多くないようです。周辺には商店街もなく、住宅地で、人通りもあまりありません。終点としては実に中途半端であるという印象を受けます。当初からこの内部を目的として鉄道を敷いたとするならば、この辺りが宿場町であった、交通の要衝であった、などという理由があるはずです。しかし、内部に関してはそのようなことがないようです。
後に調べてみると、実は、内部線は鈴鹿方面への連絡を目的とする路線であったということです。しかし、建設資金のためなのか、内部からの延長はかなわなかったのでした。
この先の交差点で国道1号線と合流します。内部線のルートは、ほぼ国道1号線と並行しており、泊駅から車窓でも見ることができます。さすがに国道1号線の交通量は多いようです。
内部駅には車庫があります。内部線・八王子線を走る全車両がここに所属しており、点検などを受けます。ク161が停まっていたので、撮影してみました。後にあるモ260形のパンタグラフの大きさが目立ちます。
もう1枚、撮影しました。
駅の周りに商店があまりなく、コンビニエンスストアもありませんが、郵便局などはあります。道路を挟んで、駅の反対側に、狭いながらも自転車置き場があり、この辺りでは自転車が多いこともわかります。
ちょうど昼時となりました。この先のことを考えて、内部で昼食をとることとします。駅前の交差点のそばに「だん長」というお好み焼き屋兼飲み屋があったので入り、昼食をとりました。何故か、店のテレビの画面に映されたのは東京の吉祥寺にある賃貸マンションでした。どう見ても関東ローカル番組という内容です。
この写真だけを見ると、日本の至る所にありそうな風景という感じがします。自転車が並べられていて、いかにも駅前という感じがしますし、住宅が建ち並んでいるところは首都圏の郊外を思い起こさせます。このような場所を走る鉄道路線が廃止の危機に瀕しているとは思えないのですが、やはり自動車社会の進展も、この住宅地の拡大とともに生じているのでしょうか。
内部地区の案内板がありました。すぐ近くに旧東海道、つまり国道1号線が通っているためでしょう。この先で内部川を渡り、しばらく走ると鈴鹿市に入ります。一方、反対側に進めば近鉄四日市駅付近の市街地に向かうことができます。
この案内板のある道路は国道1号線ではなく、県道407号線ですが、旧東海道のルートです。追分駅付近で再び国道1号線と合流します。おそらく、旧国道1号線の部分でしょう。現在の国道1号線は内部駅の東側、小古曽駅の東側を通ります。
三重交通(三交)バスの内部駅前バス停がすぐそばにありました。近鉄四日市駅方面へのバス路線が通っています。内部線の電車は平日の日中に、1時間あたり2往復が通っています。おそらく、バスの本数はもっと少ないだろうと思い、時刻表を見てみました。
案の定、少ない本数です。下に路線図もありますが、完全に内部線と競合する、とも言えない路線でした。平日でも7時台にならなければここにバスが来ません。しかも7時台で2本、8時台で1本です。これでは通勤に使えません。終バスは、平日で19時、土曜・休日ですと18時50分です。内部線が廃止されたらバスの本数が増える、というのでしょうか。そのように考えるのは早計ではないか、とすら思えてきます。所要時間や運賃までは確認していませんが、バスの場合は渋滞ということも考えられますので、所要時間はあまり当てにならないかもしれません。内部線よりよいと思われるのは、車椅子利用者が乗車する場合でしょうか。
12時35分発の電車が内部駅で発車を待っていました。これに乗ることとしますが、まだ時間があります。モ263+サ124+ク115の3両編成で、写真のモ263は薄い紫色、サ124が緑色、ク115が黄色です。先程、内部に来る電車に乗った際に、泊駅で交換した編成でした。
内部車庫は、近鉄の名古屋輸送統括課運輸部車両課富吉検車区の管轄下にあるようです。富吉検車区は名古屋線の富吉駅に隣接しており、愛知県の蟹江町にあります。名古屋線の車庫は白塚駅の近くにもあります。
モ263の側面です。
次はサ124の側面です。
そしてク115です。末尾の番号が統一されていませんが、編成は組み変わったりするのでしょうか。なお、このク115はクロスシートではなく、ロングシートを備えています。また、ク110形はサ360形を改造した車両で、三重交通時代に製造された車両ですが、モ260形と同じような前面に変化しています。
この電車に乗り、日永へ向かいます。
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