ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

函館本線山線区間の命運は?

2021年12月30日 08時00分00秒 | 社会・経済

 たしか長野新幹線、つまり現在の北陸新幹線の開業に合わせる形で、新幹線に並行する在来線についてはJRグループの経営から分離するという政府与党合意がなされました。これにより、北陸新幹線の開業および延伸に伴って信越本線の横川駅〜軽井沢駅が廃止され(高崎駅〜横川駅は信越本線のまま)、軽井沢駅〜篠ノ井駅がしなの鉄道に移管され、篠ノ井駅〜長野駅は信越本線のままであるものの、長野駅〜妙高高原駅がしなの鉄道に移管され、妙高高原駅〜直江津駅がえちごトキメキ鉄道に移管されるなど、信越本線がズタズタにされ、北陸本線も短縮されています。また、JR西日本の城端線、氷見線および七尾線が飛び地のようになっており、在来線の路線網も切り裂かれたような形になりました。

 東北新幹線についても同様で、東北本線は東京駅〜盛岡駅に短縮され、盛岡駅〜目時駅はIGRいわて銀河鉄道、目時駅〜青森駅は青い森鉄道に移管されています。そして、今回取り上げる北海道新幹線の開業に際しては、津軽線はJR東日本の路線であるため並行在来線として扱われなかったものの、海峡線、江差線、そして函館本線は並行在来線となりました。海峡線はJR北海道の路線のままですが江差線は道南いさりび鉄道に移管されています。残るは函館本線ですが、厄介な話になっています。

 北陸新幹線、東北新幹線、九州新幹線、北海道新幹線の開業および延伸により、一部の並行在来線が第三セクターに移管されてきた訳ですが、果たして、このように並行在来線をJRグループから切り離してよいのであろうかという疑問は残ります。鹿児島本線の門司港駅〜八代駅および川内駅〜鹿児島駅のように、在来線でJRグループのまま残っている路線・区間もありますが、利用客が少ない区間はまずJRグループから切り離されます。これがよいことであるかどうか、見直す必要があると思われるのです。

 さて、函館本線の話です。函館本線は函館駅から森駅、長万部駅、倶知安駅、小樽駅、札幌駅を経由して旭川駅までの幹線ですが、長万部駅から小樽駅までの区間は山線とも言われており、運行本数も乗客も少ない区間です。実際、かつての寝台特急北斗星号など、函館駅から札幌駅までを走る特急は長万部駅から室蘭本線および千歳線を経由していました。勾配などの関係によるためです。

 しかし、北海道新幹線は室蘭本線と並行せず、山線と並行します。この山線が、北海道新幹線の開業に伴って廃止される可能性も高いのです。沿線自治体をメンバーとする会議が続けられており、12月27日にも開かれました。朝日新聞社のサイトに、2021年12月28日10時30分付で「並行在来線、方向性決まらず」という記事(https://www.asahi.com/articles/ASPDW6T2KPDWIIPE00Z.html)が掲載されていたので、今回はこの記事を参照してみました。

 12月27日に開かれたのは並行在来線対策協議会の後志ブロック会議です(倶知安町)。山線の沿線自治体は9市町であり、それぞれが山線の存廃に態度を示したのですが、山線全体を鉄道路線で残すという選択肢を取った自治体はなかったとのことです。

 JR北海道も国土交通省も、鉄道路線として山線を残すことには消極的です。国土交通省は、山線を国が保有することにも消極的です(否定的と記すほうが正しいかもしれません)。

 その他の選択肢は、ⓐ山線全体をバス転換する、ⓑ山線のうちの余市駅〜小樽駅のみ鉄道路線として残すが長万部駅〜余市駅はバス転換する、ⓒ長万部町の部分のみバス転換する、というものでした。

 このうち、ⓐの意向を示したのが仁木町、共和町および倶知安町です。ⓑは余市町のみ、ⓒは長万部町のみが示しています。一方、小樽市、ニセコ町、蘭越町および黒松内町は態度を保留していますが、山線全線を鉄道路線として残したい旨を表明してはいないので、別の選択肢を用意している、または探っているのかもしれません。

 函館本線は幹線ですが、これは札幌都市圏における利用客の多さなどによるところが大きく、山線のみを取り上げたら地方交通線の水準です。詳しく調べた訳ではないのですが、おそらく1980年代の特定地方交通線の水準ではないでしょうか。1980年代と言えば、北海道の鉄道路線が次々に廃止され、路線網が縮小した時期です。天北線、羽幌線、100キロメートルを超える路線も容赦なく廃止されました。その後も深名線、北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線(旧国鉄池北線)などが廃止されています。

 鉄道路線を維持するには莫大な費用が必要となります。利用客が多ければあまり問題にはならないかもしれませんが、少なければ費用をかけてまで維持する必要があるのかという問題が生じます。輸送量が少なければバスでよいということになるのです。これはわかります。気動車の単行で鉄道路線を走らせるのは、たしかに、バス1台走らせるよりもコストがかかるでしょう。ただ、鉄道を廃止してバス路線に転換しても、乗客の減少は止まらずにバス路線も廃止されてしまうという例が少なくありません。悪循環とも言えるでしょう。

 長らく経営状況が悪いJR北海道は、このところ、毎年のように駅を廃止しています。こうして費用を削減しているのですが、改善しているとは言えない状況です。山線も本線とは名ばかりの状態が続いているだけに、ⓐが選択される可能性は非常に高いと言えるでしょう。

 他方で、気になることがあります。北海道新幹線を札幌駅まで延伸するとして、どの程度の需要が見込まれるのでしょうか。

 よく、新幹線については4時間の壁というような意味の表現が用いられます。東京駅からの所要時間が4時間を超えるようであれば航空路線のほうが需要が高いというようなことです。現在、東北新幹線および北海道新幹線で東京駅から新函館北斗駅まで乗車すると4時間を超えます。これは青函トンネルで速度規制がかけられていることが理由となっているようです。青函トンネルの区間では貨物列車も運行されているのです。既に東京〜札幌の航空路線は航空各社のドル箱とも言える状況ですから、これを崩すのは非常に難しいでしょう。


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