ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

何故急ぐ?

2020年07月15日 00時00分00秒 | 国際・政治

 この時勢にどうして観光支援策を進めなければならないのか、理解できないという方も多いのではないでしょうか。私もその一人です。内容の問題ではなく、時期の問題であるということです。

 22日から「Go To トラベル事業」という観光支援策が始められようとしています。国内旅行の代金のうちの半額(1泊2万円が上限)が補助されるというのですが、正直なところ、今、急いで行うべきことでしょうか。

 今月に入ってから新型コロナウイルス感染者が再び増加しており、また九州地方など各地で豪雨による甚大な被害が発生しています。13日には、災害復旧のために熊本県に派遣された高松市役所の職員の方が新型コロナウイルスに感染したという痛ましいニュースがNHKラジオ第1放送の速報で入りました。感染経路はともあれ、この話一つをとっても、新型コロナウイルスは「東京問題」ではなく全国の問題であることが明らかでしょう。また、沖縄県の状況も非常に気になるところです(ウイルスのタイプという点においても、その他の問題についても)。

 既に7月10日、全国知事会は「『Go To トラベル事業』の実施に係る緊急提言」をまとめ、発表しています(http://www.nga.gr.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/2/20200710%20gototoraberu%20kinkyuteigen.pdf)。この「緊急提言」は、「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、飲食業をはじめとしたサ ービス業などの売り上げが激減し、地域経済を取り巻く環境は一段と厳しさを増している。特に延べ宿泊者数が8割以上減少するなど、観光関連産業については苦境に陥っている状況である」ことから「地域経済の早期の回復を図るため、『Go To トラベル事業』を積極的に進める必要があ」るとしつつも、「国内の一部地域においては、新型コロナウイルスの新規感染者が増加しており、『Go To トラベル事業』が新型コロナウイルス感染症の拡大要因となることだけは避けなければいけない」、「令和2年7月豪雨の被災地においては、直ちに観光を行うことも困難であり、復旧状況を踏まえた開始が必要である」と述べ、「『Go To トラベル事業』の実施に当たっては、全国一律の実施ではなく、新型コロナウイルスの感染状況や被災状況を踏まえ、 まずは近隣地域の誘客から始め、段階的に誘客範囲を広げていくなど、 地域の実情に応じて実施することを強く求める」と結んでいます。

 14日には、山形県知事、むつ市長など、地方公共団体の首長から疑念の声があがりました。当然でしょう。特に、むつ市長の記者会見での発言は「感染の拡大に歯止めがかからなければ、政府による人災だというふうに評価ができる」という、かなり強い表現です(動画で見ました)。同市は「Go To トラベル事業」の期間中に観光施設の閉鎖を行うことを検討し始めたということです(同市のホームページを参照してください)。むつ市では新型コロナウイルスの感染者が確認されていないようですから、心情は理解できます。

 国にとって、そして少なからぬ地方公共団体にとって、観光が大事であるということもわかります。しかし、今の段階で観光が優先されることには疑問が残ります。


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